研究活動報告

令和元年度北農賞を受賞

情報公開日:2020年1月24日 (金曜日)

公益財団法人北農会主催の北農賞贈呈式が、2019年12月16日(月曜日)に京王プラザホテル札幌で開催され、農研機構北海道農業研究センター(北農研)は、報文部門、品種育成部門で栄えある北農賞を受賞しました。

報文部門

報文 : 「土壌凍結深制御技術による畑地の生産性向上」 (北農 第86巻2号 掲載)

受賞者名 : 農研機構 北海道農業研究センター 下田星児・小南靖弘・廣田知良

近年は、寒冷・少雪地域においても積雪が早まり土壌凍結が進まない事例が増えています。土壌凍結深が減少すると、凍結を免れたバレイショ塊茎(地下茎の一部が養分を蓄え肥大したもの)が残存し野良イモ(雑草化したバレイショ)被害が問題となります。このため、十勝地方を中心に畑の雪を列状に除雪して土壌凍結深を制御する「雪割り」が普及しました。一方、オホーツク地方では、土壌凍結による砕土性の向上などを期待して、畑全面を圧雪する「雪踏み」が試みられていました。しかし、土壌凍結の作物生産性向上に関する科学的知見はなく、また「雪踏み」による土壌凍結深の有効性にも不明な点が多かったため、生産性向上のための土壌凍結深の諸条件の解明が強く望まれていました。

著者らは、「雪踏み」が「雪割り」と同様に土壌凍結深制御手法として有効であることを明らかにし、両者の特性を整理しました。次に、土壌凍結による砕土性・透水性の向上や窒素溶脱抑制効果を明らかにし、これらと生産性向上効果が共通して得られる最大凍結深度が30~40cmの範囲にあることを見いだしました。さらに、「雪割り」用の土壌凍結深推定計算システムを改良し、「雪踏み」用の実用システムを開発しました。土壌凍結深制御技術が、野良イモ対策となるだけでなく、土壌の理化学性を改善し、作物の生産性を向上させる技術であることを明らかにし、その成果を生産者がすぐに活用できる内容に取りまとめました。本成果が、道東地域に有用な技術として広く普及し、畑作物の安定生産に大きく貢献することが期待されることが高く評価され受賞に至りました。

受賞者写真
報文部門受賞者 : 左端 廣田 知良 氏、左から二人目 下田 星児 氏、右端 小南 靖弘 氏

品種育成部門

育成品種 : てん菜品種「北海みつぼし」

受賞者名 : 農研機構 北海道農業研究センター 黒田 洋輔、田口 和憲 (現 農林水産省 農林水産技術会議事務局)、岡崎 和之、高橋 宙之 (現 農研機構 九州沖縄農業研究センター)、阿部 英幸 (現 農研機構本部)、中司 啓二 (退職)

てん菜は北海道における基幹産業の製糖業を支え、地域社会の発展に必須の原料作物です。しかし、海外産地に比べ高温・多湿の栽培環境にある北海道では、黒根病、そう根病や褐斑病が発生し、深刻な収量低下を招きます。黒根病とそう根病は薬剤防除が困難であり、抵抗性品種の作付けが有効です。一方、褐斑病は薬剤防除が可能ですが、排水不良畑では適期防除が困難な場合も多く、やはり抵抗性品種の作付けが有効です。また、これら3病害は同時発生する事例も多いですが、現在の普及品種の大半は、複合病害抵抗性を持たないため、これらの病害発生への対応は難しいです。このようなことから、複合病害抵抗性を持つ新品種の開発が強く望まれていました。

北農研とSyngenta社(スウェーデン、現MariboHilleshög社)は、黒根病、そう根病と褐斑病の3病害に抵抗性を持つ「北海みつぼし」を育成し、平成24年に北海道優良品種に認定されました。本品種は世界で最初に普及した「黒根病抵抗性の品種」です。

「北海みつぼし」は、黒根病が発生しやすく、褐斑病の適期防除が困難な排水不良畑を中心とする作付けで、てん菜の生産と農家所得の安定に寄与できます。本品種は、平成27年から道内各地で約1,000ha作付けされており、てん菜の安定生産への貢献が期待されることが高い評価を得て受賞に輝きました。

受賞者写真
品種育成部門受賞者 : 左 黒田 洋輔 氏、右 岡崎 和之 氏