研究活動報告詳細

多収水稲新品種「ミズホチカラ」の飼料米の現地栽培圃場視察

情報公開日:2010年10月27日 (水曜日)

長い夏を終え、秋らしさを感じられるようになった10月27日(水)、今年度第5回目の所長キャラバンを福岡県三潴(みずま)郡大木町において実施しました。今回は九州沖縄農研・低コスト稲育種研究九州サブチームの坂井サブチーム長のコーディネートのもと、飼料米を用いた畜産物の生産・販売を行っているJA全農ふくれん、エフコープ生活協同組合に加え、研究機関、普及指導機関や佐賀大学など30名以上の方に参加頂き、直播栽培を含めた現地栽培状況の視察と意見交換を行いました。

「ミズホチカラ」とは?

今回メインとなった水稲新品種「ミズホチカラ」は、背丈が低くて茎が強いため倒れにくく、主食用の品種に比べて玄米収量が2割以上も多い特長があります。昨年の記者発表後にマスコミ等で多数紹介頂き、米粉と飼料米の両方に利用できる多用途向けの新品種として2009年農林水産研究成果10大トピックスに選定されました。また、各種の研究成果普及イベントの食材としても選ばれるなど、大変注目されている品種です。

20101027_1
鉄コーティング湛水直播の「ミズホチカラ」。
ジャンボタニシの被害を少し受けましたが、
株が大きく張っています。

20101027_2
当日は佐賀大学の学生も大勢参加して下さいました。

重量感ある稲穂にびっくり

福岡県では、JA全農ふくれんが昨年から「ミズホチカラ」の栽培を開始し、県内生協と協力して肥育豚に給与して肉生産・販売まで行っています。今年は約73haまで生産を拡大しました。
キャラバン隊は、まず大木町で地域循環環境保全型農業に取り組まれている中島農産の「ミズホチカラ」栽培圃場を視察しました。鉄コーティング種子による湛水直播栽培の圃場は、豚糞堆肥の投入による地力の高さが稲にも表れていましたが、スクミリンゴガイによる生育初期の食害が少し見られました。乾田直播の圃場はスクミリンゴガイの被害も見られず、深みのある金色に輝いた重量感のある稲穂に参加者は圧倒されていました。中島農産で生産された「ミズホチカラ」は養豚の飼料として利用され、その豚肉は「道の駅」で販売されるなど、お客さんからも好評を得ているそうです。

20101027_3
爽やかな秋晴れの中、
皆さん真剣に圃場に見入っていました。

20101027_4
乾田直播の「ミズホチカラ」。
雑草や欠株もなく素晴らしい
できばえで、熟れ色もきれいです。
かなりの多収が見込めます。

品種特性を活かした低コスト生産、そして安定供給へ

現地視察後、九州沖縄農研筑後研究拠点の会議室において意見交換会を開催しました。九州沖縄農研の研究員より「ミズホチカラ」の品種特性と、低コスト直播技術について紹介をした後、JA全農ふくれんの野口室長より福岡県での栽培試験の概要と飼料米としての利用状況について、同園芸開発課の久我氏より飼料米を給与した豚を用いた商品開発への取り組みについて紹介があり、これを受けて、エフコープの三谷氏より、「今後はこの需要を継続的なものとし、自給率アップに繋げていきたい」との心強い声を頂きました。また、中島農産の中島代表からも「安全で農薬を減らしたお米を作りたい。そのためにも病気や害虫に強い水稲品種を作って欲しい」と生産者としての期待が込められたご意見を頂きました。
その後も南筑後普及指導センターの椛島氏から普及指導上の留意点について、佐賀大学農学部の田中先生からは、専門のバイオマス研究での繋がりがきっかけで今回参加頂いたこと、また、大学生協でも飼料の一部に「ミズホチカラ」を使用した「米卵(こめたまご)」が販売され、高い評価を得ていることなど、消費者の立場として情報を頂きました。

20101027_5
意見交換会では中島
農産の中島代表を始め、たくさんの方から
貴重なご意見を頂きました。

20101027_6
JA玉名岱明支所の「ミズホチカラ」
栽培圃場。見渡す限り、
黄金の稲穂が広がっています。

最後にタイミング良く焼き上がったホームベーカリー製の「ミズホチカラ」パンを全員で美味しく頂きました。
所長からは『飼料米の生産利用は自給率向上のための施策の一つであり、「ミズホチカラ」は今後生産が拡大され貢献するものと期待されます。中島さん達の圃場を見て痛感したのは、品種の特性を生かす栽培技術の重要性でした。「ミズホチカラ」は穂重型の多収品種なので大きい穂を作るのは容易ですが、それをうまく登熟させる栽培技術が必要です。中島さんの圃場では健全な稲体と優れた登熟が観察できました。品種改良の課題としては、さらなる多収性のみならず、直播適性や耐病虫性の強化が急がれますが、DNAマーカー選抜も活用した育種の加速化に取り組むこととしています。』とのコメントがあり、短時間ながら充実したキャラバンは和やかに終了しました。

解散後、昼食のため立ち寄った「道の駅」で参加者の方々と偶然再会するという嬉しいハプニングもあり、今後の繋がりを予感させるものとなりました。
筑後でのキャラバンの後、玉名市岱明町にある米粉用の「ミズホチカラ」栽培圃場をJAの担当者に案内して頂きました。現在、50haほど栽培されていますが、熊本県内の製粉会社などから「もっと生産量を増やして欲しい」といった熱い要望もあるそうです。今後の普及拡大を強く確信し、晴れ渡る青空の下、玉名での所長キャラバン番外編も無事に終了しました。

広報普及室 栗田 薫

法人番号 7050005005207