研究活動報告詳細

大豆品種共同育成キャラバン

情報公開日:2010年10月19日 (火曜日)

今年度第4回目の所長キャラバンを10月19日(火)、佐賀市川副町の佐賀県農業試験研究センターを中心に水田転換畑における大豆育種について実施しました。九州沖縄農研・大豆育種研究九州サブチームの高橋サブチーム長のコーディネートのもと、佐賀県農業試験研究センターの大豆品種共同育成圃場、現地の大豆圃場、共同乾燥施設等を視察し、生産者、佐賀県農業試験研究センターの研究担当者等、20名を超える参加者で意見交換を行いました。
佐賀県の現地へ向かう途中、熊本からの参加者のみで熊本県合志市にある大豆現地試験圃場を訪れました。ここでは高橋サブチーム長からの概要説明後、高橋主任研究員より水田転換畑を利用した狭畦密植適応性試験についての説明があり、「フクユタカ」と比較して、「九州161号」が耐倒伏性もあり、密植適応性の高いことがわかりました。なお、多少の白絹病や害虫「ハスモンヨトウ」の被害が見られるものの、全般的に良い生育状況であることが確認できました。
それから佐賀県農業試験研究センターに移動し、今年度より平成27年度まで実施予定の共同研究「佐賀県を中心とする暖地水田転換畑に適した大豆品種の育成」についての意見交換会を開催しました。

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合志市の狭畦密植栽培圃場。同じ時期に播種
しても、品種によってこんなに違いが出ます。

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共同研究を締結し、握手を交わす佐賀県農業試験
研究センターの福島所長(写真右)と
九州沖縄農研の井邊所長(写真左)。

始めに、佐賀県農業試験研究センターの福島所長より、
「本日は大豆の共同研究ということで、多数の方に来所頂きありがとうございます。佐賀県では昭和26年から夏大豆の指定試験として大豆育種を行っていましたが、その後面積が激減し、昭和40年代には試験が中止になりました。その後、生産調整により大豆が見直され、昭和63年には佐賀大学と共同研究で「むらゆたか」を育成し、平成6年からは県単で大豆育種を行ってきました。ご存じの通り職員数も少なく、水稲の育種をしながら大豆の育種を行っているため、なかなか十分にいかない面もあります。また、予算が年々削減され、米の方にシフトせざるを得ない状況があり、大豆についてはますます減らされていた状況にありました。
しかしながら、集団で大豆を転作するようになり、現在は佐賀県全体で栽培面積が約9,000haになりました。大豆の品質の改良についても生産者からの要望も強いものがあり、新しい品種が期待されています。著しい気象の変化に耐え得るものを今後、独法でも育成して欲しいと思っています。そのお手伝いを一緒にさせてもらえることは、当センターとしても非常に心強いと思っています。最近は暗い話題ばかりですが、県と独法とが一緒に研究させて頂くことは大変夢があると思っています。今後とも一生懸命試験に励み、より良い品種がたくさん出て、九州の大豆がますます発展するようにお願いしたいと思っています。今日は当センターの圃場をしっかり見て頂き、ご指導ご鞭撻を頂ければありがたいと思っています。」
と歓迎のご挨拶を頂いた後、九州沖縄農研の井邊所長から
「今回の大豆の共同育種には二つの意義があります。一つ目は、早い世代からの水田での選抜が可能になったことです。大豆生産の主力は九州北部の平坦地の転換畑ですが、その品種育成は、残念ながら圃場の都合等で、これまで熊本県合志市の本所(畑圃場)で実施せざるをえませんでした。当所の筑後研究拠点(転換畑)でも、わずかながら選抜を始めていますが、圃場が手狭で十分確保できていません。今回、共同育種を行うことで水田での選抜が可能になりました。もう一つの意義は、共同選抜による品種育成の加速化とブランド確立です。これまでも佐賀県農業試験研究センターでは系統適応性検定試験(各県に配付する前の系統の評価)を実施していましたが、それをさらに前倒ししてF5世代あたりから評価・選抜することになりました。佐賀県での適応性を早くから評価できるわけですから、品種として普及するまでの期間を短縮できます。また、育成された品種は、九州でもっとも大豆生産の多い佐賀県が育成に参加した品種ということで他県へも波及し、九州ブランドとして成長していくことも見込まれます。独法、県ともに予算・人員とも縮小し、一層の連携分担が必要であると考えます。主要農作物では例のない品種共同育成の試みが是非成功し、他の作物へも拡大していくことを期待しています。」とのコメントがありました。

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佐賀県農業試験研究センターの試験圃場。
多くの人が良い品種が出来ることを待ち望んでいます。

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鈴なりになった現地圃場の大豆「フクユタカ」。
日本で最も栽培面積の多いこの品種は九州沖縄
農研で育成されたもの。

続いて高橋サブチーム長から共同研究に至った経緯、佐賀県農業試験研究センターの広田専門研究員より大豆品種試験の概要等について紹介がありました。総合討議の中で横尾作物部長より実需からのニーズについて、松本特別研究員より現地のニーズについてお話頂き、生産者や実需者からは「フクユタカ」よりも多収で収量が安定し、裂皮の出ない品種が強く求められていることがわかり、早い段階で実需者の評価を取り入れながら、良い品種作りに繋げていくことの大切さを強く感じました。
最後に福島所長と井邊所長による共同研究実施の決意を込めた固い握手が交わされ、研究担当者、参加者全員での記念撮影をもって意見交換会が終了しました。
室内検討の後、横尾作物部長に所内の大豆品種共同育成圃場等を案内頂き、数多い系統の中から有望系統の選抜を実施している試験現場を間近に拝見し、大豆生産に力を入れている県の研究技術の高さを実感することができました。F5世代の共同選抜試験圃場は順調な生育を示し、どのような系統が選抜されてくるか期待されます。また、奨励品種決定調査試験の中では豆腐加工適性が高く早生の「九州160号」などが有望とみられました。

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大豆共同乾燥調製施設。管内で生産された大豆が
集められ、調製、乾燥を経て出荷されます。

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川副町の大豆生産圃場。佐賀県農業試験研究
センターと生産者の厳正な管理の下に、
原々種となる大豆も作られています。

それから川副町にあるJA佐城南部地域大豆共同乾燥調製施設へ移動し、施設長の栗林氏より町で取り組んでいる転作大豆団地化(ブロックローテーション)について説明頂きました。ここでは乾燥施設の建設で収穫から乾燥、調製、出荷までの一環体系が可能となり、大豆本作化が確立されていることがわかりました。
最後に近隣の大豆の原種生産圃場へ移動し、生育状況について生産者の声を頂きながらの意見交換に話も弾み、予定時間を延長したキャラバンは盛況のうちに終了しました。

広報普及室 栗田 薫

法人番号 7050005005207