研究活動報告詳細

産山村での飼料用トウモロコシ生産の取り組みについて

情報公開日:2009年8月27日 (木曜日)

8月27日(木)、第5回所長キャラバンを熊本県産山村において実施しました。
今回は「産山村飼料用トウモロコシ栽培現地の視察」と題して、山田周年放牧研究チーム長のコーディネートのもと、産山村の生産者、熊本県阿蘇地域振興局、産山村役場の担当者のほか、九州沖縄農研からの参加者も含め約30名が参加して、現地の視察と意見交換を行いました。

壮大な阿蘇五岳を望む産山村は、標高500mから1,047mに位置する夏でも冷涼な地域で、広大な牧野(原野)を利用した肉用牛の生産(放牧)でもよく知られています。2008年5月、産山村役場の担当者より、「更なる飼料自給の向上のために、飼料用トウモロコシを肉用牛向けの飼料として、産山村で栽培できないか」と相談があったことがきっかけで、周年放牧研究チームが協力することになりました。昨年度は原野と耕作放棄地、水田跡等合計90a程度の面積で試験的にトウモロコシを生産しました。

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今回のキャラバンでは、まず最初に、九州沖縄農研が開発した栽培技術や育成品種などを利用した飼料用トウモロコシ圃場を視察しました。2年目となる今年度は栽培規模を拡大し、約3haの荒廃草地を借り受けてトウモロコシの栽培に取り組んでいます。各種作業は、熊本県の支援を受けたトウモロコシ生産コントラクター「産山村作るんです!担い手組合」が主体的に実施しています。続いて、自給飼料を中心とした放牧と肥育を行っている上田尻牧野組合の牛舎を見学しました。牛舎では、自給飼料100%を目指して肥育されている「あか牛」(褐毛和種)も見られました。お昼は名水百選にも選ばれた池山水源入口にある食事処で、脂肪分が少なくて柔らかい阿蘇の特産和牛「あか牛」に昆布茶をかけて頂く「あか牛茶漬け」、地元の民宿でも有名な色とりどりのお漬け物、水まんじゅうなどの美味しい料理を堪能しました。

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午後からは、「産山村作るんです!担い手組合」の井組合長の牛舎を見学しました。本組合は自給飼料を村内で生産利用しようと、今年、畜産農家の若手メンバーで結成したものです。井組合長の牛舎では、昨年生産したトウモロコシサイレージを肥育牛に給与しており、細断型ロールベーラで調製したロールベールサイレージは嗜好性がよく、開封後も10日程度は変敗しなかったので、飼料として使いやすいなど利点を聞きました。その後、産山村役場の会議室をお借りして意見交換会を行いました。まず、九州沖縄農研周年放牧研究チームの加藤研究員より産山村での飼料用トウモロコシの栽培について、次に山田チーム長よりトウモロコシのホールクロップサイレージ(WCS)の利用と題して話題提供がありました。これらに対して、サイレージ一つ当たりの飼養可能頭数やWCS利用による濃厚飼料の削減可能量、あるいは収穫に要する作業時間や作業機械の価格等、技術導入に向けた前向きな質問が活発になされました。また、ベテランの営農家からは、「30年前バンカーサイロによるトウモロコシサイレージの導入を試みたが、飼料の栄養価や作業の手間等により、次第に牧草に取って代わられた経緯がある。今回の技術が、手間とコストを考慮した体系であれば、現地普及に弾みが付く」といった期待の声が上がりました。

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最後に所長より『トウモロコシのサイレージは飼料として古くから認識されていましたが、これまで収穫調製に労力がかかることから敬遠されてきたようです。細断型ロールベーラの導入により収穫調製が容易になり、飼料としての品質が良いことも確認されたため、今後の普及が見込まれ、耕作放棄地の有効利用や自給飼料の増産に貢献することが期待されます。九州沖縄農研としては、トウモロコシの乾物収量の更なる増加を図ること、耐病性品種の育成も含め生産の安定を図ること、堆肥の有効利用による有機資源循環を図ること等、技術開発で貢献すべきことが宿題として残されていると思います。』とのコメントがありました。

現場に入り込んでニーズを把握し、技術開発に繋げることは重要です。健康、国産、安全性をキーワードとする「あか牛」の全国ブランド化を目指すためにも、数百年以上の伝統を持つ阿蘇の放牧に、最新の飼料生産技術や肥育手法を組合わせ、新しい肉用牛の生産技術を作ることに加え、新たな肉質の評価基準、「あか牛」に合う調理方法やメニューの提案、さらに消費者をターゲットとした宣伝活動が重要であることを再確認してキャラバンは終了しました。

広報普及室 栗田 薫

法人番号 7050005005207