研究活動報告詳細

多収で手刈りに向くサトウキビ新品種「Ni27」の宮古島における普及促進に向けて

情報公開日:2009年8月 6日 (木曜日)

年初めて日本に台風が接近した8月6日(木)、大型で強い台風8号の強風圏内にあった沖縄県宮古島市において、第4回所長キャラバンを実施しました。今回は九州沖縄農研の寺内さとうきび育種ユニット長のコーディネートのもと、沖縄県農業研究センター宮古島支所との共同開催による、多収で手刈りに向くサトウキビ新品種「Ni27」(旧系統名:KR96-93)の新品種説明会をメインに、会場での意見交換のほか、製糖会社の表敬訪問と現地試験圃場の視察を行いました。

沖縄県宮古事務所の講堂をお借りして開催された新品種説明会には、県農業研究センター宮古島支所、県宮古農政・農業改良普及センター、県宮古農林水産振興センター、宮古島市役所、JAおきなわ宮古地区営農センター、沖縄製糖、宮古製糖、地元の宮古新報、宮古テレビのほか、遠くは石垣島の県八重山普及センター、石垣島製糖、石垣市さとうきび生産組合の生産者など総勢70名の方に参加頂きました。

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宮古地域では夏植え中心のサトウキビ栽培が行われていますが、その栽培面積の7割以上は手刈りにより収穫されています。手刈りは、まず「倒し斧」で根元から刈り倒し、そして「脱葉鎌」で梢頭部(糖度の低い頂上の部分)を切り取り、葉を除去し、最後に茎を束ねて搬出するという大変な作業です。この地域で最も多く栽培されている品種「宮古1号」は、葉が剥がれにくく、茎上部には側枝が発生するため、収穫作業に労力を要するほか、葉焼病も多く、病害の発生原因となっていることなどが問題視されてきました。

「Ni27」は、脱葉性が良いため葉を取り除きやすい、やや太茎で太さや長さにバラツキが少ない、曲がりがスムーズで鎌運びがしやすいという特長があり、手刈り収穫が7割以上を占める宮古地域での栽培に適していることから、「Ni27」は宮古・八重山地域における沖縄県の奨励品種として採用が決定されました。また、可製糖量が多いことはもとより、葉焼病に強いことから今後の普及が期待されています。

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新品種説明会では、九州沖縄農研の井邊所長による挨拶の後、寺内さとうきび育種ユニット長から「Ni27」の特性について説明がありました。また、県農業研究センター宮古島支所の宮城作物園芸班長より、宮古島における生育・収量と栽培上の留意点などについて紹介がありました。参加者のうち、品種育成にかかわった製糖工場の担当者からは、サトウキビに孔を開けて品質を低下させるメイチュウがやや多く見られたとの指摘があり、今後とも注視していく必要があることが確認されました。一方、石垣島から参加頂いた農家の方からは熱い期待の声が寄せられ、今後の普及に期待が膨らみました。

この後、沖縄製糖、宮古製糖を表敬訪問し、サトウキビ現地圃場を4ヶ所視察しました。比較的大きな規模で試験栽培を委託している農家の圃場では、太茎で茎揃いのよい特長が表れており、特に枯葉がすでに茎から剥がれ落ち、収穫作業の容易さが想像されました。栽培している農家の方からは、早く普及に移して欲しいとの要望が寄せられ、将来的には収量を競う『競作会』に新品種「Ni27」で参加したいとの力強い宣言がありました。

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キャラバン終了後、所長より「今回のキャラバンで、地元の「Ni27」に対する期待の大きさが良くわかりました。高糖度で多収であるだけでなく、手刈り収穫に向くという特性が評価されていると思います。風による折損に留意する必要があり、今後は春植えも可能な風折抵抗性のあるものが求められます。収穫期の拡大のため、さらに早期高糖性の品種育成を九州沖縄農研として急ぐ必要があると考えます。」とのコメントがありました。

台風8号の影響により、予定を大幅に変更して行われた今回のキャラバンでしたが、強風の中、現地を見て廻ることで、普段の穏やかなイメージとは違った島の自然の厳しさを体感することができました。この台風は島に大きな被害をもたらしたものの、一方では「水不足の宮古島に20日ぶりの恵みの雨をもたらしてくれた」といった参加者の声もありました。また、台風接近の最中に実施されたにもかかわらず、予想を超える多くの方に参加いただいたことで、サトウキビ新品種に対する地元の期待の高さがより強く感じられる、印象深いキャラバンとなりました。

広報普及室 栗田 薫

法人番号 7050005005207