研究活動報告詳細

「中山間地帯における低コスト稲作を目指して」

情報公開日:2009年7月17日 (金曜日)

-佐賀市三瀬村における集落規模でのショットガン直播栽培への取り組みを見る-

7月17日(金)、第3回所長キャラバンを佐賀市三瀬村において実施しました。今回は九州水田輪作研究チームの田坂チーム長コーディネートのもと、地元中鶴(なかのつる)地区の生産農家、佐賀県三神農業改良普及センター、JAさが神埼郡統括支部、九州沖縄農研からの参加者を含めた約30名で現地圃場の視察と意見交換を行いました。

佐賀市三瀬村では農業従事者の高齢化の問題を抱えており、その解決策の一つとして、直播栽培など省力栽培技術の導入に対する期待が高まっています。九州の中山間地を代表するこの地域におけるショットガン(打ち込み式代かき同時土中点播)栽培への取り組みから、九州地域の中山間地への直播栽培の普及に繋がるヒントが得られるのではないかという期待を込めて、今回のキャラバンを実施しました。ショットガン直播栽培は、当センターが開発した水稲の湛水直播栽培方式で、九州ではこれまで佐賀県上峰町や福岡県筑前町など平坦部を中心に普及が進んでいます。

はじめに、佐賀県三神農業改良普及センター北部振興担当の上瀧主査より、中鶴地区にショットガン直播栽培を導入した経緯や稲の生育状況等について説明をいただきました。地元の中鶴集落営農組合は平成19年度から湛水直播栽培試験を開始し、今年度は地域の水田の約75%(約12.5ha)で本格的なショットガン直播栽培に取り組んでいます。移植栽培に比べて作業時間が大幅に短縮されること、収量も隣接する移植栽培圃場と同等量を確保できたこと、さらに標高500m前後に位置するこの地域は、平野部に比べて気温が低いため水も冷たく、稲の幼苗期の害虫であるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害がほとんど見られないという利点を紹介されました。その反面、低温や土壌還元等による苗立不良や生育不良等が問題になっているとの説明を受けました。この問題に関連して、引き続き、九州水田輪作研究チームの原主任研究員から、現地で実施している水稲初期生育不良の改善試験の紹介がありました。

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その後、会場を中鶴公民館に移して行われた意見交換会では、まず、移植栽培と比較して「苗床作業がいらなくなったことや、1人でも播種作業ができるため、大幅に省力化できました。」との意見があり、高齢化が著しい中山間地においてショットガン直播栽培が省力化にも貢献していることが確認できました。さらに「春先に、レーザーレベラーを用いて圃場を均平にしたところ、発芽苗立ちが昨年に比べてはるかに良くなった」「レーザーレベラーの作業効率には土壌の乾湿が大きく影響する」「次回もぜひレーザーレベラーを、できれば雑草の出ない秋のうちに使用したい」「水たまりができるところでは雑草が生えやすいが、低コスト省力の雑草対策は難しい」など率直なご意見やご要望を頂きました。また、『みつせ鶏』に続くブランド農産物を直播の米を利用して開発したいという抱負も農家民宿経営者からいただきました。苗立ち不良水田のなかには堆肥投入量が多すぎた圃場もありましたが、「技術の普及には、ときにはこのような体験から学習することが必要である。」との意見もありました。また、直播技術の現地普及には旗振り役が必要ですが、「対象地域が広がるほど、普及センターだけではなくJAの協力が必要である。」との指摘もありました。九州沖縄農研からは、「田植えと違って田んぼの見た目が変わらないため、播種後の不安感がつきまとうが、播種後は水入れを我慢することが大切。」などのアドバイスがありました。田坂チーム長からは、普及センターの上瀧主査を始め、関係者の皆さんの積極的な取り組みに対して深謝の意が表されました。

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キャラバンの閉会に当たり、所長より「三瀬のような中山間地で、このようにショットガン直播が普及するとは思ってもみませんでした。直播栽培は平坦地の大規模水田で低コストを目的に普及するものと思い込んでいたからです。中山間地でも、播種機を共有して集落営農で実施すればコストを抑えることができ、直播栽培も十分可能であることが示されました。このことを実証した中鶴地区の生産者の皆さんと三神農業改良普及センター各位に敬意を表します。今後、この中鶴地区の実践がモデルとなって、他の地区・地域にも普及することを期待します。」とのコメントがありました。

最後に、直播栽培を導入した農家の女性から、「移植栽培では重い苗運びなどの作業を手伝っていたが、直播栽培になってからはその必要が無くなり、非常に楽になった。」という嬉しいコメントを頂き、研究成果や技術が地域に普及する原動力は女性の理解と協力にあることを強く感じました。

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広報普及室 栗田 薫

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