研究活動報告詳細

土から始まる高バイオマス量サトウキビ物語-沖縄県伊江島でキャラバンを実施-

情報公開日:2008年10月31日 (金曜日)

-沖縄県伊江島でキャラバンを実施-

年間2千人が視察に訪れるというアサヒビールのバイオマスエタノール実証プラントがある伊江島。全国から注目されています。基本コンセプトは、食料と競合しないエタノール生産。つまり、砂糖もちゃんと得た上でエタノールの生産を行おう、というものです。アサヒビールと共同で研究を進めているこのプロジェクト、当センターサトウキビ育種ユニットは、バイオマスエタノール製造に適した原料である高バイオマス量サトウキビの品種育成を担当しています。エタノールは砂糖を結晶として取った後の糖蜜(結晶にならなかった糖分が含まれる)から作ります。エタノールをしっかり製造するために、通常は結晶を取る工程を3回行うところを1回にして良質な糖蜜を確保します。従って、原料となる品種には、結晶を1回しか取らなくても単位面積当たりの糖収量が従来の製糖用品種と同等以上であること、製糖やエタノール製造工程のリサイクル燃料としての有効利用や栽培圃場への有機物還元による土づくりのため有機物(繊維分)が多いこと、が求められます。

今回のキャラバンでは、有望系統の開発が進んできたことから、その生育状況を確認するとともに、エタノール製造を担当するアサヒビールの担当者や地元の関係者と意見交換を行うことを目的に、2008年10月31日に実施しました。当センターからはサトウキビ育種ユニットを始め11人が参加、総勢で15名のキャラバンでした。
試験圃場では、多くの品種・系統が栽培されていましたが、今年は台風の被害も少なく各々の特性を示しつつ良好な生育を示しており、品種になるのも近いのではないかと期待がふくらみました。また、バイオマスエタノール製造プラントでは、担当者から、様々な技術と工夫によって、従来の製糖工場と同等の砂糖の製造が可能であり、かつ高純度のエタノール生産が可能であることを説明して頂きました。

意見交換で特に印象的だったのは、村長を始めとした地元の方々が口々に強調された、土づくりのためのサトウキビの重要性でした。伊江島は、葉たばこや菊の生産が盛んであり、沖縄でも有数の高収益営農を展開していますが、その基盤は保水性の低い島尻マージと呼ばれる土壌です。しかも、すぐ下層には石灰岩の岩盤があり、持続的な営農に土づくりは欠かせない問題、少しでも油断すると営農自体が崩れてしまうのです。なんとか安定した持続的な営農を確立したい、そのためにサトウキビを輪作体系に組み込み、また、畜産と結んで良質の堆肥を投入し、とても貴重な土を維持・向上したい、という切実な願いを感じ取りました。ともすればバイオマスエタノールだけが注目されますが、高バイオマス量サトウキビからとれる多くの有機物(繊維分)への期待もとても大きいものでした。

島という閉鎖系空間において、循環型で持続性のある営農を確立すること。そのために当センターのサトウキビが大きな貢献ができる日が一日も早く来ることを願いつつ意義深いキャラバンを終えました。

karc20081031_tameikeため池前で説明を行う南西諸島農業研究チームの生駒チーム長(右から3番目)。
キャラバンでは島でのもう一つの貴重な資源である水についても勉強しました。

karc20081031_plantアサヒビールの実証プラントで説明を行う小原研究員(写真中央)。
高バイオマス量サトウキビを原料とした製糖及びエタノール製造試験が行われています。

karc20081031_plant現地圃場で行われた意見交換の様子。(左端が担当の寺島研究員)
製糖量を減らさずにエタノール量を増やすことができる有望系統の数々。
品種として普及できる日をたくさんの人が心待ちにしています。

karc20081031_iejima沖縄本島の北西部に浮かぶ伊江島。
当センターの高バイオマス量サトウキビが島の農業、土壌、生活を潤す
良いきっかけとなることを、島のシンボル「タッチュー(城山)」に願いつつ・・

法人番号 7050005005207