研究活動報告詳細

「久留米59号」を早く品種にしよう!! -佐賀県唐津市でイチゴキャラバンを実施-

情報公開日:2007年12月17日 (月曜日)

幅広で高い畝の肩には大きく粒ぞろいのイチゴが鈴なり。そして株の根元には2連チューブが走り、中を温水が通っていく。井手さんのイチゴ栽培ハウスの中の光景は、通常のイチゴ土耕促成栽培の状況とは随分違い、とても広々と、またゆったりとしていました。

今年第7回目となる所長キャラバンは、イチゴ周年生産研究チームが育成中の有望系統「久留米59号」を現地で試験栽培されている佐賀県唐津市相知町の井手重夫さんのハウスに、収穫期となった12月17日にお伺いしました。1999年に交配した「久留米59号」は、

  • 大果で揃いがよく、
  • 食味が収穫期間を通じて安定して高く、
  • 日持ち・棚持ちがよく、
  • 炭そ病、うどんこ病等に対する複合病害抵抗性を持つ、

という優れた特性があります。しかし、やや晩生で連続出蕾性がやや劣るため収量がやや低い、着色もやや悪い、といった点から県による普及品種にするための試験ではなかなか高い評価が得られていません。しかし、この系統を試験栽培して5年目になる井手さんのところでは大変高い評価を頂いてます。何が違うのか、どう欠点を克服されているのか、そこを知りたい、というのが今回のキャラバンのねらいでした。

井手さんのハウスに持ち込んだのは「久留米59号」だけではありません。イチゴ周年生産研究チームが新たに開発した株の根元(クラウン部)の温度制御により草勢維持と収穫の早進化・平準化をめざすクラウン部温度管理技術、その効果を低コストでより確実にするハウス暖房機の廃熱利用システム(核となる「温室施設装置」(実用新案登録第3117519号))も。現地では、品種育成を担当するイチゴ周年生産研究チーム主任研究員や、実用新案登録した装置を開発し文科省創意工夫功労者賞を受賞した業務第2科職員から説明がありました。一方、この系統の特性を活かし欠点を克服するには、と井手さんもいろいろと工夫され、作業の軽労化・省力化も考えて導入したのが冒頭の幅広で高い畝です。これによって作業が楽になったことはもちろん、果実の着色がぐんと良くなったとのことです。

研究者、技術専門職員が開発した技術、生産者の工夫が一体となったことで、欠点は克服され特性はより活かされて、すばらしい成果が得られたということを目の当たりにし、納得しました。何かご要望は、との問いかけに、長年研究協力員の立場で久留米のイチゴ系統の試験栽培に携わってこられた井手さんは「早く品種にして下さい。」の一言。「久留米の品種とはイチゴ栽培をはじめてからなので、ずいぶん長いおつきあいだが、この59号が最も手応えを感じている。惚れたといっていい。」とも。

試しにまわりの方々に味見をしてもらったところ、果実が大きくて見栄えがよく贈答用にぴったり、しかもとても美味しくまた食べたい、他のイチゴの倍の価格でも買いたい、等々の高い評価を頂き、早く品種にして販売してほしい、との要望も受けているとのこと。

品種でしか発揮できない特性もあれば、栽培法で克服できる欠点もあります。品種になる、とはどういうことだろうか、それが普及する、とはどういうことだろうか。品種育成のあり方だけでなく、品種化の制度・仕組みも含めて、もう一度しっかり考えるべき問題であることを痛感したキャラバンでした。

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現地試験について説明する曽根主任研究員
-畝が高く広い、左端が経営主の井手さん-

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幅広の畝間にはオガクズ-高い畝の肩部分に
果実がくることで着色が格段によくなった-

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廃熱利用システム
-説明する中原業務2科職員(左端)-

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箱に詰めてみると果実の大きさがわかる

法人番号 7050005005207