研究活動報告詳細

沖縄本島南部地域の農業活性化をめざして

情報公開日:2007年11月 9日 (金曜日)

沖縄県の最も基幹となる作物は言うまでもなくさとうきびです。増産プロジェクトの実施など関係者の努力により生産振興を進めていますが、面積拡大やコスト低減の切り札として注目されているのが収穫期間の早進化であり、その大前提となるのが早期収穫品種の育成・普及です。一方、沖縄県の中でも本島南部地域は、都市近郊ということもあり、さとうきびとともに、園芸や畜産も盛んで、この地域の農業活性化にとっては、これら3つの作目の有機的な連携が欠かせません。九州沖縄農研では、バイオマス・資源作物開発チームや南西諸島農業研究チームを中心に、こうした課題の解決に向けた研究を進めています。

今回の所長キャラバンは、こうした研究の進捗状況、とりわけ現地における取り組みの状況を知ろうと、11月8、9日の2日間にわたって本島南部地域を巡りました。課題内容が多岐に渡り関係者も多いため、キャラバン参加者は総勢49名に上りました。

糸満市や八重瀬町にあるさとうきびの新品種「NiTn20」「NiN24」等を用いた秋収穫の現地実証圃場では、11月収穫予定の早期収穫品種の生育がたいへんよく高収量が予想されるとともに、10月収穫後も既に旺盛に芽が出てきており、次作の高収量が期待されました。また、実証圃場の生産者である「葉たばこ+さとうきび」複合経営の経営主の「年内収穫になって1月定植の葉たばことの輪作が可能になった。さらに収穫が早くなればもっとさとうきびを拡大したい。」という発言に、早期収穫品種活用の具体例を知ることができ、増産の可能性を実感しました。意見交換では、早進化の効果は多面的に現れてきているが一気に秋収穫というのは現実的でない、本島南部でも面積拡大の余地はある、現地試験を沖縄県各地で実施して研究を強化するとともに生産者に良さを実感してもらうべき、といった、突っ込んだ議論ができました。

沖縄県農業研究センターと共同で実施している糸満市に設置されたレタス新栽植様式の実証圃場では、有機質の乏しい沖縄の土壌の理化学性改善を目的とした有機物の多い「沖縄型堆肥」の施用、省力とカリ過剰害抑制を目的としたカリを含まない緩効性肥料の秋・冬・春の3作全量基肥施用、頭上かん水で問題となる水分むらによる生育不揃いや品質低下を回避するマルチ内点滴チューブ灌水などを組み合わせた体系を見学しました。10月定植のレタスが見事な生育と玉揃いを示しており、参加した多くの生産者から「これはいい」との感嘆の声が上がり、試しに作ってみたいとの声も出るなど手応えを感じました。意見交換では、開発した個々の技術について、多くの生産者に利点を実感して頂くため資材を配布して試作してもらうなどの工夫をしており、一部には高い評価を得ている、といった補足説明がありました。また、この開発技術導入のターゲットとなるのは小規模で面積当たり高収益を求める経営であり、当面はそうした経営への導入をめざしつつ、大規模経営にも利用可能な技術に仕上げていくべき、という点で共通認識を得ることができました。

八重瀬町具志頭の酪農組合堆肥センター見学では、高温・多湿で有機質の分解が早い沖縄に適した、チップなど難分解性の木質系副資材を多く含む「沖縄型堆肥」の生産状況を堆肥生産組合長から説明して頂きました。九州沖縄農研の研究パートナーとして多くのご協力を頂くとともに、一緒にいろいろな改善、例えば、有機質を多く含むように篩い目を大きくするなどの工夫をされていますが、製品の売れ行きは好調とのことで一安心しました。また、悪臭がほとんどないことに感心しました。意見交換では、最も大きな問題は木質資材の調達・確保にあることが浮き彫りになりました。街路樹などのせん定枝葉があるのに使用できない現実を踏まえると、やはり制度まで含めた地域システムのあり方にまで迫る必要性を感じました。

さとうきび早期収穫品種、特に秋収穫の実現やさとうきび・園芸・畜産の連携など開発技術の現場への普及には、現在の生産・流通システムを大きく変える必要があり、実現には多くの困難があります。しかし、ある参加者からの「これはある意味の「革命」ですよ。」という印象的な言葉が示すとおり、関係者の開発技術についての認識は明らかに高まっており、また、普及に向けた動きは着実に育っていることを実感しました。地域システムの変革に向けて、さらに研究と普及のための活動を進めていく必要性を痛感したキャラバンでした。

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レタスの新栽植体系の現地試験圃場-見事
な生育と玉揃いに参加者から感嘆の声が-

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沖縄型堆肥を製造している堆肥センターで組
合長より説明を受ける-悪臭はほとんどない-

karc20071109_ikenkoukan
室内での意見交換-秋収穫について突っ込
んだ意見が飛び交う-

karc20071109_setumei
新品種の栽培試験の説明を受ける
-秋収穫後の萌芽状況の品種比較-

法人番号 7050005005207