研究活動報告詳細

省力的・低コストな水稲直播技術 「水稲べんがらモリブデン湛水直播」(べんモリ直播)現地検討会を開催しました。

情報公開日:2016年8月25日 (木曜日)

べんモリ直播は、べんがら(酸化鉄)とモリブデン化合物を種子に被覆することで、水稲の湛水直播栽培で課題であった苗立ち率を安定させる技術です。これまでの直播技術に比べて被覆資材量が少なく、費用と手間を大幅に軽減できる期待の技術です。
このため、九州沖縄農業研究センター(九沖農研)はべんモリ直播の普及拡大をめざして、平成28年8月3日(水)から4日(木)にべんモリ直播の現地検討会を開催しました。

1日目は、水稲べんモリ湛水直播を行っている農家圃場3か所を見学しました。
1か所目は佐賀県上峰町で、10haで代かき同時打ち込み点播を行っています。前年大豆作の水田ではスクミリンゴガイの食害がほとんどみられず、苗立ちと生育は順調です(写真1)。
2か所目は、福岡県みやま市で、高精度土中播種機を用いて播種を行っています。落水管理ができる播種同時除草剤を用いることで、スクミリンゴガイが多く生息する水田にもかかわらず、苗立ちを確保できています(写真2)。
3か所目は、福岡県筑後市で、大豆作後の水田8haで作溝無覆土播種を行っており、十分な苗立ちを確保できています(写真3)。

2日目の室内検討会(写真4)では、冒頭、九沖農研の栗原所長から次のような期待が述べられました。
「べんモリ直播の基本技術は2010年の農林水産研究10大トピックスに選定され、これ以降、全国各地で実証試験が行われてきました。直播先進地域の東北地方においても宮城県を中心に普及が拡大しています。今回の技術検討会を通して、べんモリ直播の導入条件を明確にし、さらなる普及拡大を目指していきたい」

室内検討では、その後、九沖農研の原上級研究員がべんモリ直播の技術概要を説明し、現在の普及状況(全国で300haと推定)を報告しました。また、宮城農試の菅野氏からは、宮城県内で70ha実施されており、鉄コーティングに比べ、苗立ちがよく、倒伏に強くイネの生育が旺盛である反面、鳥害の発生がみられたことが報告されました。農機メーカーや地元・筑後の農事組合法人からはこれまでの取り組みの中でわかった導入時に注意すべき点とその対処法が紹介されました。会場では活発な質疑応答が交わされ、べんモリ直播に対する現場の期待の高さを実感することができました。

2010年以降、数々の現地実証試験を通し、べんモリ直播はさらなる普及拡大に向けて着実に階段を昇っています。

【べんモリ直播開発者、原上級研究員の声】
べんモリ直播は、従来の種子被覆法に比べて、容易で費用が安い点が受け入れられる要因となっています。基本的な被覆技術は九沖農研で開発しましたが、代(しろ)の調整や播種、水管理やその後の栽培管理といった周辺技術を農家の方をはじめとする多くの方に工夫いただいたことがうまくいっている要因と思います。また、東北など全国的な広がりは、各県農試や機械メーカーの方々のご尽力によるものです。これからも多くの方と一緒に普及を図っていきます。

写真1 佐賀県上峰町
写真1 佐賀県上峰町

写真2 福岡県みやま市
写真2 福岡県みやま市

写真3 福岡県筑後市
写真3 福岡県筑後市

写真4 室内検討
写真4 室内検討

写真5 べんモリ種子
写真5 べんモリ種子

写真6 べんモリ種子のコーテング作業(1)
写真6 べんモリ種子のコーテング作業(1)

写真7 べんモリ種子のコーテング作業(2)
写真7 べんモリ種子のコーテング作業(2)

法人番号 7050005005207