研究活動報告詳細

【所長キャラバン】アスパラガスの新規作型開発に関して沖縄県読谷村で所長キャラバンを実施しました。

情報公開日:2016年12月 6日 (火曜日)

【キャラバン名】 アスパラガス長期どり新作型の導入可能性に関する意見交換会(平成28年度 第1回 所長キャラバン)

実施日時:平成28年10月7日(金曜日)10時00分~12時00分

実施場所:沖縄県読谷村先進農業支援センター(圃場、会議室)

キャラバンと実施した背景について

  所長キャラバンは、現地関係者との意見交換を通した研究成果のフォローアップ、普及現場における新たな技術ニーズの探索などを目的に実施している活動です。

   亜熱帯地域に属する沖縄県では、高収益な新規品目としてアスパラガスを位置づけ、年間を通した高い温度条件を活用して、九州よりも長い2月~11月を収穫期間とするハウス長期どり栽培の導入が試みられています。そのような中、九州沖縄農業研究センターでは沖縄県農業研究センター等と共同で農食推進事業「積極的な光合成産物蓄積手法と萌芽制御によるアスパラガス長期どり新作型の開発」を実施中(H27~29年度)です。本事業では、沖縄県において単価の高い10月~翌年5月を収穫期間とする長期どり新作型のプロトタイプの開発を目的として研究を推進中です。
   そこで今回の所長キャラバンでは、事業開始から1年半を経過したこの時期に、これまでに得られている研究成果を関係者に提示するとともに、現地沖縄県のアスパラガス生産者や普及関係者等とアスパラガスの生産・普及について意見交換する中で、本事業から得られる成果の導入可能性等について検討しました。

挨拶する栗原所長と九沖農研関係者
挨拶する栗原所長と九沖農研関係者

現地の説明をする沖縄の関係者
現地の説明をする沖縄の関係者

キャラバンの概要など

   所長キャラバンには県内のアスパラガス生産者、JAおきなわ、読谷村役場、中部農業改良普及センター、沖縄農研ならびに九州沖縄農研から、30名近い方々が出席しました。

地域の農業概況と読谷村先進農業支援センターの概要

   読谷村は沖縄県の中部地域に位置し、平成22年度の経営耕地面積が208ha、販売農家数が239戸、うち専業農家数が111戸となっており、それぞれ沖縄県の中部地域の18.7%、16.0%、16.3%を占めています。地域の中で栽培面積ならびに飼養頭数の多い作物・家畜として、工芸作物ではさとうきび、かんしょ、園芸作物ではキク、にんじん、家畜としては肉用牛、豚、採卵鶏が挙げられています。
   先進農業支援センターは旧読谷補助飛行場跡地の一角に、高収益型農業の振興、農家の育成、販路開拓などの支援を目的として造られ、約20haの敷地に野菜と花のビニールハウス、育苗ハウス、平張りハウス等が設置されています。

読谷村先進農業支援センター内のハウス群
読谷村先進農業支援センター内のハウス群

天窓を大きく開けた高軒高アスパラハウス
天窓を大きく開けた高軒高アスパラハウス

視察先のアスパラガス生産者の経営概況と栽培の状況

   視察したアスパラガス生産者は、サラリーマンを経て、沖縄県立農業大学校で1年間の研修を積み、先進農業支援センターの栽培施設を借りて、各種野菜を栽培しています。現在は農地面積20.6aでゴーヤー(8.3a)、トマト(6.7a)、アスパラガス(4.0a)ならびにズッキーニー等(1.6a)を基本的に一人で栽培し、収穫したアスパラガスは村内外のファーマーズマーケット4カ所に出荷しています。
   ハウスでは現在沖縄県が推奨している栽培方式に則ってアスパラガスを栽培しており、平成25年4月に播種し、育苗後、同年9月上旬にハウス(間口10m、奥行き20m、高軒高鉄骨製)に畦幅180cm、株間30cmで定植し、翌年4月から収穫を開始しています。今年度は3月8日に地上部を全て刈払う全刈りを行い、3月18日から光合成用の茎を新たに伸ばし始め、4月18日から収穫を開始しています。しかし褐斑病やコナジラミの多発で、8月18日に2回目の全刈りを余儀なくされました。
   生産者からは夏場はホテル等からのアスパラガスの需要が大きく、できれば夏場でも光合成用の茎を維持できる防除技術や遮光ネットを展張しても30°C以上となるハウス内の高温を緩和する技術の必要性が挙げられました。

アスパラの生育状況
アスパラの生育状況

更新された親茎と収穫前の若茎
更新された親茎と収穫前の若茎

近くのファーマーズマーケットのアスパラガス
近くのファーマーズマーケットのアスパラガス
(左:読谷村産、 右:愛媛県産)


室内での意見交換

   初めに、農食事業の研究総括者から事業の目的と九州沖縄農研でこれまでに得られた成果ならびに沖縄農研の研究担当者から沖縄農研でこれまでに得られた成果が紹介され、質疑応答を行いました。その後、事業の成果として新たに開発しようとしている長期どり新作型の導入可能性について、読谷村を管轄する中部農業改良普及センター、JAおきなわ、読谷村役場の各担当者ならびに生産者の方々にご意見を伺いました。 出された主な意見としては、

・沖縄県としては現在沖縄農研が開発した栽培体系に則って数軒の農家がアスパラガス栽培を始めたところであるが、直売所にとっては有望な品目であり、長期出荷が望まれる新作型は魅力的である、
・現在冬場の野菜としてはインゲンマメがあるが、アスパラガスが新たな冬場の品目になるかどうか見極めたい、
・夏場の暑さの中での収穫は大変厳しいが、ホテル等における需要ならびに出荷場の周年利用の観点から、夏場における出荷も必要である、 等がありました。

   最後に、今後とも関係者間で情報交換を継続するとともに、農食事業が終了した暁には、成果発表会を行えるよう、引き続き研究に邁進することを約束して、所長キャラバンを終了しました。
   今回の所長キャラバンの開催に当り、関係者の皆様には大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

これまでの成果を説明する研究総括者
これまでの成果を説明する研究総括者

熱心に説明に聞き入る出席者
熱心に説明に聞き入る出席者

開発者(「農食事業」研究総括者)の抱負

   沖縄県は冬季の気温が高く、九州以北の長期どり栽培では生産が困難な冬季においても無加温でアスパラガスを生産できる可能性を持っています。本事業ではこの沖縄の気象条件を活用し、秋~春期を主な収穫期間とする作型の原型を開発することを目標に研究を進めています。そして、将来的には、沖縄県で開発され現在栽培が始められている春~秋期が主な収穫期間である作型と組み合わせることにより、沖縄県での年間を通したアスパラガスの生産実現、産地化に貢献できればと考えています。

法人番号 7050005005207