研究活動報告詳細

イチゴ「恋みのり」の普及促進に関して熊本県宇城市で所長キャラバンを実施しました。

情報公開日:2018年3月 9日 (金曜日)

実施日時:平成30年1月10日(水曜日)13時00分~16時00分
実施場所:熊本県宇城市 道の駅うき 宇城彩館、農家圃場、JA熊本うきいちごパッケージセンター、
JA熊本うき下北営農センター会議室

キャラバンと実施した背景について

所長キャラバンは、現地関係者との意見交換を通した研究成果のフォローアップ、普及現場における技術ニーズの探索などを目的に実施している活動です。

2016年9月に出願しました「恋みのり」は、大果で収量性が高く収穫・調製作業の大幅な省力化が可能であり、大規模生産に適応した省力型品種として普及が期待されています。熊本地震で大きな被害を受けた宇城地域においては、「恋みのり」を復興の起爆剤として、本年度より本格的な作付け(4.2ha)が始まりました。さらに、昨年12月よりパッケージセンターの運用が始まり、栽培と出荷調製作業の分業化による更なる規模拡大、輸出まで含めた販路拡大による収益力強化による産地振興が期待されています。一方で、ランナーの発生が少なく定植苗数が不足しやすい、連続出蕾性が高いことに起因する芽なし株の発生、成り疲れ防止技術等の安定生産技術が充分に確立されていません。

そこで、先行産地であるJA熊本うき管内の栽培状況を確認し、安定生産を進めるための課題点について整理するとともに、熊本地震後のイチゴ産地の復興現状と「恋みのり」を活用した産地振興等の幅広い課題について、生産者、行政関係者、流通関係者等と意見交換をしました。

キャラバンの概要など

所長キャラバンには九州農政局、熊本県、長崎県、JA全農、JA熊本うき、JA阿蘇、JAたまな、JA島原雲仙、民間企業、農研機構本部ならびに九沖農研等から、70名近い参加がありました。

道の駅うき 宇城彩館での「恋みのり」の販売状況


「恋みのり」が販売されている道の駅うき 宇城彩館

キャラバン参加者は13時に宇城彩館に集合し、「恋みのり」(宇城彩館では"恋のぞみ"として販売)の販売状況から視察しました。当日は「恋みのり」の平パックが610円、レギュラーパック(2段詰め)が480円、化粧箱入りが2,200円で販売されていました。


宇城彩館の入り口に集合する参加者の面々


「恋みのり」の販売の様子

高設ベンチでの「恋みのり」の栽培状況

JA熊本うきの苺専門部会は部会員56戸が12.8haでイチゴを栽培しています。そのうち、「恋みのり」が4.2haで最も多く、次いで"のぞみ"3.4ha「さがほのか」3.6ha、「さちのか」1.6haの順となっています。

当日訪問した生産者は前作までは「さちのか」を栽培していましたが、今作から「恋みのり」に替えられました。16.5aのハウスに高設ベンチを設置し、夫婦二人で栽培していました。普通ポットで育苗し、9月21日~23日に定植、10月21日にビニール被覆、12月5日から収穫が始まっていました。元肥をN成分で20kg/10a、追肥をN成分で2kg/月施用し、11月下旬から炭酸ガス施用、12月1日から6°Cで加温していました。栽培管理上気をつけていることは灰色カビ病の発生と新葉の展開ということでした。「恋みのり」は「さちのか」に比べ下葉欠きや摘果の必要性がなく、大玉のため収穫や調製がやりやすく、日持ち性が良いというお話でした。ただ、収量が多いので、年末・年始は収穫・調製に追われたということもお話しされていました。


「恋みのり」の生産者のハウスで
視察する参加者の方々


高設ベンチでたわわに実った「恋みのり」

パッケージセンターの概要

JA熊本うきいちごパッケージセンターは昨年の12月5日に完成し、12月7日に稼働を始めました。来作に向けラインを倍以上に増設することを検討していて、国や県の補助を要請していくというお話でした。


新設されたJA熊本うき
いちごパッケージセンター


設置された選果ラインでの「恋みのり」の
調製作業を見学する参加者の面々

意見交換会

会場をJA熊本うき下北営農センター会議室に移して意見交換を行いました。冒頭、JA熊本うきの堀代表理事組合長が挨拶され、"JA熊本うきは「恋みのり」でいく、そのためには予冷施設の改修等が必要である"、と述べられました。


意見交換会の冒頭でご挨拶する
JA熊本うきの堀代表理事組合長


曽根イチゴ育種グループ長の
「恋みのり」の紹介に聞き入る参加者

「恋みのり」の特性、今年度の状況について

引き続き曽根イチゴ育種グループ長が"大果で収量性が高く、省力栽培が可能なイチゴ新品種「恋みのり」の紹介」と題して講演を行いました。講演の最後に一昨年4月に発生した熊本地震に触れ、"イチゴ産地も大きな被害を受けたが、生産者・JA・行政・企業が一体となった取組みにより復旧が始まり、どうにか秋の定植に間に合った、今後さらなる復興を目指して、「ゆうべに」と「恋みのり」を組み合わせ、高設栽培による軽労化・大規模化、パッケージセンターを活用した調製作業の分業化等により、次世代イチゴ栽培の標準型を提案していきたい"、と話されました。

講演の後、JA熊本うき、JA阿蘇、JAたまなのイチゴ部会長やJA職員からそれぞれの産地の栽培状況が報告されました。主なご発言としては、
(JA熊本うき)
・昨年要望をとりまとめてパッケージセンター(以下PC)が出来た。「恋みのり」に驚いている。PCとベストマッチである。いろんな問題をクリアして来年度につなげたいが、PCの充実を国、県にお願いしたい。「恋みのり」について、年末・年始は収穫・調製で大変な思いをした。前進化や遅くしたりして、植え付け時期をずらしたい。芽なし、灰色カビ病が多いが、「さがほのか」と比べて、葉欠きや摘果等の管理が少なく、大幅な省力化が実現できており、仕事を探すほどである。
・「恋みのり」は年毎の収穫量のブレが少なく、計画出荷が可能である。

産地復興のための補助金について

九州農政局からは、"1/2補助として強い農家づくり交付金でハウス建設等ができる、定額補助としてミツバチの導入、水田から野菜に転作する場合は追加的補助が可能である、補助事業については農水省のHPをみると、逆引き事典があるので活用して欲しい"、等が報告されました。

流通関係者のご意見

「恋みのり」は輸送性、日持ち性、外観とポテンシャルの高い品種である、香港では検疫がほぼゼロであるが、それ以外は品質に対する要求も高くハードルは高い、海外向けには国内向けとは明確に区分できることが必要である"等が報告されました。

最後に栗原所長が閉会の挨拶に立ち、参集者に御礼を述べるとともに、開催地にも御礼を申し上げ、"息の長い品種となるよう問題点を克服していきましょう。産地間競争もありますが、まずは連携して、「恋みのり」の周知を図りましょう"、と挨拶しました。


閉会の挨拶をする栗原所長

「恋みのり」育成者の抱負

「恋みのり」は産地の皆様方の熱い要望で、早期の品種登録に至り予想以上の速度で普及が進められています。厚くお礼申し上げます。「恋みのり」が熊本地震で被災された産地の創造的復興に少しでもお役立て頂ければ、育成者としてはこの上ない喜びです。今年度より本格的な栽培が始まり、厳冬期のガク枯れ、芽なし株の発生等々、栽培上の課題も明らかになりつつあります。産地の皆様方と一体となり、「恋みのり」の栽培管理を改善し、安心して栽培が出来るようマニュアル化を進めてまいります。産地振興に関しては行政のバックアップをよろしくお願いいたします。