研究活動報告詳細

「福島の農業再生を支える放射性物質対策研究シンポジウム」を開催しました。

情報公開日:2013年6月25日 (火曜日)

主催

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

共催

独立行政法人 農業環境技術研究所

後援

内閣府、復興庁、農林水産省、環境省、福島県

開催日時

2013年5月15日 (水曜日) 14時00分~17時30分

会場

コラッセふくしま多目的ホール(福島県福島市三河南町1番20号)

参加者

286名(農業者・JA14、民間企業・民間団体53、大学等21、研究機関20、マスコミ8、 農水省25、他省庁16、福島県40、農研機構67、その他22)

 

開催概要

東日本大震災に伴う原子力発電所事故後2年が過ぎ、農業再生への取り組みの加速が期待される一方、技術的な課題も多く残されている。農研機構では平成24年度に設置した農業放射線研究センターに、放射性物質分析棟を新たに建設して、福島県と連携した取り組みを強化しようとしている。今後の研究加速を図るため、農業環境技術研究所と共催してシンポジウムを開催し、原発事故の影響を受けた農地における放射性物質の動態及び対策技術研究の状況を示すとともに、農業再生を支える研究の推進についてパネルディスカッションを行った。

挨拶

農業・食品産業技術総合研究機構理事長 堀江 武 【関連資料】
農林水産大臣政務官 長島忠美
復興庁 福島復興局長 丸山淑夫

講演

農業環境技術研究所 谷山一郎 研究コーディネータ「農地における放射性物質の動態解明」

福島県のモニタリングサイト等での農業環境技術研究所の取り組みを中心に、物理的減衰、流出・浸透、作物等による持ち出しなどを踏まえた農林地における放射性セシウムの動態にもとづく、今後の放射性セシウム濃度の推移について講演した。【関連資料】

農研機構 木村武 震災復興研究統括監「農地除染及び農産物への放射性物質の移行低減技術」

原発事故が起きた平成23年度からの農研機構における放射性物質の除染および作物への移行低減に関する取り組み等について講演した。今回、東北農研福島研究拠点に建設した分析棟を拠点に福島県との連携協力を強化し、放射性物質対策技術研究をさらに加速化する。【関連資料】

福島県農業総合センター 吉岡邦雄 生産環境部長 「福島県における水稲の放射性物質吸収抑制対策確立の取組と今後の研究について」

水稲の放射性物質吸収抑制対策としてカリ施用の詳細な検討結果について説明した。今後、大豆、そばなどについて放射性物質吸収抑制対策技術を検討し、東北農研福島研究拠点に建設した分析棟に研究員3名を駐在させ、現地実証試験を行う予定である。【関連資料】

講演風景
講演風景

 

パネルディスカッション-営農再開・農業再生に向けた研究をどう進めるか

座長

農研機構 副理事長 米山忠克

パネラー

飯舘村 村長 菅野典雄
新潟大学 農学部 教授 野中昌法 【関連資料】
東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授 根本圭介 【関連資料】
東京農業大学 応用生物科学部 教授 後藤逸男 【関連資料】
農林水産省農林水産技術会議事務局 研究統括官 中谷 誠
福島県農林水産部 農林地再生対策室長 沢田吉男 【関連資料】

 

被災地の現状と現在行われている対策を各パネラーから報告いただいた。この中で、飯館村菅野典雄村長からは、放射能の災害はゼロからのスタートではなくマイナスからのスタートであり、様々な要因により住民の心が分断されている点が他の災害と比較して大きく異なる。除染は確実に効果があることは分かったが、まだ不安が多いのでそれらを払拭するために出来るだけ多くの研究を集め、統一的かつ実用的な成果を出してほしい。そしてこの災害を成長だけではない成熟社会の有り様を考えていく機会にしていかなければならないとの報告があった。
新潟大学の野中教授からは、二本松市東和地区(ゆうきの里東和)において、複数の大学の参画により、水田・畑1筆ごとなどの詳細な放射性物質による汚染マップの作製等の、地域農業の復興を見据えた復興プログラム調査・研究を実施していること(同様の調査は、南相馬市太田川流域においても実施)が報告された。
東京大学の根本圭介教授からは、伊達市小国地区において、規制値越え玄米の原因解明を目的に、大学(東大、福島大、東京農大)が連携して試験栽培をおこない、低減資材を入れない形での水稲のセシウム吸収のモニタリングを実施していること、規制値越え玄米の出現はきわめて局所的であり、それに関わる固有の吸収要因はある程度絞られつつあることが報告された。
東京農業大学の後藤教授からは、吸収抑制対策資材としてカリウム肥料とゼオライトを取り上げ、南相馬市内の放射能汚染水田で水稲の圃場試験を行い、水田における合理的な放射性セシウム吸収抑制対策を検討していることが報告された。
その後、3名の講演者をパネラーに加え、福島の営農再開・農業再生に向けた研究、対策の取り組みについて熱心にご議論いただいた。この中で、飯館村菅野典雄村長から除染への期待について、「ある程度線量率は下がるので期待は大きい。やらなくても良いというのは住民への冒涜で、除染だけでなくその後の地力回復、長期的な農業・生活支援なども含めて考えてほしい。また農業再生の方向性について、研究が研究のための研究になることなく、実証として行っていただきたい。これらの研究と同時に、人口が減ってしまった地域で営農や農地保全などをどのように行うか。大規模化も一つの方向性だが、もう少し日本的な考え方の農法も大切だという視点を取り入れていただきたい」との要請があった。
中谷研究統括官からは、「除染における線量対策、考えるべき問題について、ガンマー線は直進するが、地形や遮蔽物の組み合わせでどこまで届くかというモデルも開発されている、これらを活用することで中間貯蔵施設や仮置き場などでの線量管理を行うことは可能。また、作物ごとの移行係数とその対策については、農林水産省として研究開発や要因解析を進めなければいけない課題として取り組んでいる。現場で問題となっているあんぽ柿、基準値超を抑えきれていない大豆、そば、牧草類。また、セシウム吸収の低い作物(品種)について、育種には10年くらい長い年月が必要なので、農林水産生物資源ジーンバンクなども活用しながら、すでにある品種・系統の中でセシウムを吸いやすいもの、吸いにくいものを特定して情報を公開する。また、これまで別々に行ってきた放射能に関する研究活動について、情報を共有しながら連携して問題解決にあたることが必要。その際、農研機構の放射性物質分析棟も利用いただきたい。連携等の取組は農林水産省も支援を検討したい。放射能対策も含めた農業の復興のため、先端技術展開事業を計画しており、新しい農業の展開を進めている」との発言があった。

 

パネルディスカッション
パネルディスカッション

 

ポスター展示
ポスター展示

 

法人番号 7050005005207