研究活動報告詳細

103回日本繁殖生物学会大会学術賞を受賞

情報公開日:2010年9月24日 (金曜日)

平成22年9月2日~4日に北里大学獣医学部キャンパス(青森県十和田市)で開催された第103回日本繁殖生物学会大会において、生産病研究チームの「化学組成の明らかな培地によるブタ胚の体外生産に関する研究」が学術賞を受賞しました。

研究担当者

生産病研究チーム 上席研究員 吉岡耕治

受賞内容

「化学組成の明らかな培地によるブタ胚の体外生産に関する研究」

近年、ブタ胚の体外生産技術は改善されてきているものの、胚の生産効率は低く、生産効率の向上と胚移植後に産子を得ることのできる安定した生産技術の開発が望まれている。本研究では、ブタ卵子の体外成熟率、体外受精率及びその後の胚発生率の向上と安定化を図るため、新たな体外生産システムの確立を試みた。

まず、胚の体外発生環境を体内(卵管内)環境に近づけることを考慮し、無機塩類及びエネルギー基質の濃度をブタ卵管液中の濃度に類似させ、アミノ酸を添加した化学組成の明らかなブタ初期胚の体外発生培地(PZM)を開発した。体内受精した1細胞期胚をPZM-4で培養すると、胚盤胞への発生率はNCSU23培地に比べ向上した。ついで、PZMからアミノ酸を除去し、グルコースを添加した体外受精基礎培地(PGM)を開発した。テオフィリン、アデノシン及びシステインを添加したPGMで体外受精を行うと、受精率及び胚盤胞への発生率が改善され、凍結あるいは液状保存にかかわらず、すべての供試精子から胚盤胞が作出できた。さらに、ブタ卵胞液を添加しない培地による体外成熟法を確立するため、修正したPZMにグルコースとシステインを添加した体外成熟基礎培地(POM)を開発し、POMへの卵胞液添加の影響について検討した。その結果、成熟培養前半にゴナドトロピン及びジブチリルcAMPを添加したPOMを用いると、卵胞液無添加でも、卵胞液添加と同様の核成熟率、受精率及び胚盤胞への発生率が得られ、ブタ胚は限定培地のみで体外生産できることを示した。

胚の体外生産システムは、卵子成熟~初期胚の発生における生理機構の解明にも有用である。そこで、開発したシステムを用いて胚発生に影響を及ぼす種々の要因について解析した。その結果、グルタミン及びハイポタウリンは卵割胚の酸化ストレスを軽減し、その後の胚発生を促進することが判明した。また、発生培養におけるウシ胎子血清(FBS)添加の効果について検討したところ、FBS添加は二相性の反応を示し、媒精後48時間目以前から添加するとその後の胚発生を抑制するものの、96時間目以降に添加すると胚盤胞への発生率及び孵化率が増加した。さらに、PZM-5にヒアルロナンを添加して得られた胚盤胞は、細胞数や呼吸活性が増加し、脂肪滴やミトコンドリアの構造が体内発生胚に類似することが分かった。一方、体外生産胚は体内発生胚に比べ、胚性ゲノムの活性化が起きる前の第2細胞周期が長いことから、体外成熟培養における卵子の細胞質成熟を改善する必要が示唆された。そこで、POMへのTGFαの添加について検討したところ、ゴナドトロピンを添加したPOMで成熟培養した場合、TGFαは卵子の核成熟率に影響を及ぼさないが、胚盤胞への発生を促進し、卵子の脂肪滴やミトコンドリアの形成に関与していることを明らかにした。

最後に、開発した体外生産システムで作出した胚の産子への発生能を検証した。まず、卵胞液添加体外成熟培地または卵胞液無添加TGFα添加POMで体外成熟し、体外受精後の胚を培養して得られた胚盤胞を8頭の受胚豚へ外科的に移植した結果、すべてが妊娠して計50頭の産子を得た。ついで、受胚豚への負担が軽く、生産現場で実施できる非外科的胚移植を行うためのブタ子宮角内胚移植用カテーテルを開発し、体外生産胚の非外科的移植について検討した。このカテーテルを用いてブタ体外生産胚を受胚豚へ移植した結果、30~40%の分娩率と平均4.3頭の産子を得た。この一連の技術により体外生産された胚盤胞は、外科的あるいは非外科的に受胚豚へ移植すると産子に発生することを実証した。

法人番号 7050005005207