研究活動報告詳細

「体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性と生産物性状に関する研究」が2011年度日本畜産学会賞を受賞

情報公開日:2011年3月27日 (日曜日)

表彰状「体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性と生産物性状に関する研究」が2011年度日本畜産学会賞を受賞しました。

受賞者

渡邊 伸也(高度繁殖技術研究チーム(現:家畜育種繁殖研究領域))

背景・目的

食品安全委員会が設立された2003(平成15)年以降、体細胞クローン牛およびその後代牛が産業的に利用されるための前提として、この委員会による食品健康影響評価(リスク評価)が必須のものとなった。その評価が開始されるためには、諸外国の研究論文に加え、わが国で生産されたこれらの家畜に関する量的かつ質的に充実した科学的データが必要不可欠であったが、当時、その種のデータの全国的なとりまとめは行われていなかった。そこで、本研究では、わが国において生産された体細胞クローン牛とその後代牛を対象に、転帰(生涯)、死因、成長・発育、繁殖性、乳肉生産性および血液性状など多岐にわたる全国的な調査を実施し、体細胞クローン牛やその後代の健全性を明らかにするとともに、これらの牛が生産した乳肉と一般牛の同等品との生産物性状を比較し、生物学的な差異を検証した。

内容・特徴

1. 体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性

体細胞クローン牛およびその後代牛の一般臨床検査と血液検査の全国調査(2005(平成17)年4月に実施)による63頭の体細胞クローン牛(その当時、全国で繋養されていた牛の約60%)と25頭の後代牛のデータ、転帰の全国調査(2006(平成18)年7月実施)による482頭の体細胞クローン牛(その時点までに全国で生産された牛の97.5%)と202頭の後代牛のデータを得た。また、収集した体細胞クローン牛およびその後代牛の健全性に関する成果資料を分析することで、出生後、24時間以上生存した体細胞クローン牛の51.6% に相当する173頭のクローン牛と31頭の後代牛の調査データを整理・分類できた。これらの臨床・病理(個体識別、血液性状、病理)、成長・発育、繁殖性及び乳肉生産(搾乳、肥育)の広範な調査分野にわたるデータを分析した結果、生後200日以上、生存した体細胞クローン牛は、一般牛と同程度に生育し(図1)、一般牛と差異のない生理機能を有することが判明した。また、体細胞クローン後代牛についても、旧高度化事業(1602)で調査した16頭のデータを加え、体細胞クローン牛の場合と同様に検討した結果、データが存在するいずれの調査分野においても一般牛との差異は認められなかった。

2. 体細胞クローン牛およびその後代牛の生産物性状

体細胞クローン牛およびその後代牛が生産した乳肉の生産性状調査において、栄養成分分析、アレルギー誘発試験(マウス腹壁法試験)、消化試験(ラット)、小核試験(マウス)、飼養試験(ラット、図2)の各検査で得られたデータを一般牛が生産した乳肉で得られたものと比較した結果、生物学的な差異は認められなかった。

2008(平成20)年4月1日、厚生労働省は上記の研究成果を中心的データとして位置付け、体細胞クローン家畜とその後代のリスク評価を食品安全委員会に依頼した。食品安全委員会では、上記の研究成果を始めとした国内外の科学的データに基づく議論を行い、2009(平成21)年6月25日、体細胞クローン家畜やその後代の食品としての安全性を示した食品健康影響評価書を公表した。さらに、本研究によって公表された研究論文の一部は、米国医薬食品局(FDA)や欧州食品安全機関(EFSA)による体細胞クローン家畜やその後代に関するリスク評価書にも引用されている。

図1

図2

法人番号 7050005005207