研究活動報告詳細

「糞上移植を利用した省力的なシバ草地化技術に関する研究」が2011年度日本草地学会研究奨励賞(三井賞)を受賞

情報公開日:2011年3月26日 (土曜日)

表彰状平成23年3月26日に糞上移植を利用した省力的なシバ草地化技術に関する研究が2011年度日本草地学会研究奨励賞(三井賞)を受賞しました。

 

受賞者

北川 美弥(山地畜産研究チーム)

背景・目的

日本の主要な草地基盤である公共牧場の数および面積は、ピーク時の1975年から減少の一途をたどっています。また利用者ニーズの多様化により、受精卵移植や冬季預託などの業務量が増加したため、草地維持管理作業の省力化が求められています。さらに従来から畜産利用されている入会牧野においても、管理者の高齢化に伴い牧野の維持には草地管理作業の省力化が必要とされています。このため低コストで省力的な草地管理に向けて、施肥等の緻密な管理を必要とする寒地型牧草ではなく、少ない管理作業で長期にわたり放牧利用することが可能な日本在来種であるシバ(Zoysia japonica Steud.)をはじめ、低投入持続型草種の利用を試みる牧場が増えつつあります。これまで多くの研究者により、シバ草地の造成・利用に関する研究が行われてきましたが、これらの多くは伐採跡地や裸地へのシバの導入であり、また機械や人手を必要とする技術でした。本研究では、多くの公共牧場に導入されている寒地型牧草地において、放牧を継続しながら省力的にシバを導入する方法として糞上移植を用い、導入後は放牧のみでシバ草地へ移行させる技術の開発を行いました。

内容・特徴

シバ草地にするためには大きく分けて1. シバの移植 2. シバが広がるまでの管理の2つの作業が必要となります。それぞれの作業を省力化するために、「1. シバの移植」では糞上移植(図1)に注目しました。糞上移植とは、放牧中の牛が排泄した糞塊上に苗を置き足で踏む移植方法です。これまで一般的に行われていた鍬を使った移植法では、シバ苗を移植した直後に放牧を行うと牛が苗を引き抜いてしまうため、苗が活着するまで牛を放牧することができず、かわりに掃除刈りをしなくてはなりませんでした。しかし、糞上移植された苗は、牛が糞の臭いを嫌い周辺の草を食べないため、移植直後から放牧しても苗が引き抜かれることはありませんでした。また、糞上移植とこれまでの移植法の作業性を比較すると、糞上移植はこれまでの移植法よりも作業時間あたりの定着株数(移植効率)は高いにも関わらず、作業姿勢から導かれた作業負担は軽いことから、効率的で作業者に優しい移植方法であることが明らかになりました(表1)。

「2. シバが広がるまでの管理」では、人手をかけず、牛の放牧のみでシバ草地化するための条件を明らかにするために異なる2水準の放牧圧条件で放牧を行い、移植後は5~8頭/haの高い放牧圧により草高を10cm前後に維持することで、移植5年目でシバの被度は50%以上となり、放牧のみでシバ草地へ移行できることを示しました。

この他、糞塊がシバ苗の根に与える影響の解明等、一連の研究により、糞上移植を利用した省力的なシバ草地化技術の開発を行いました。

図1糞上移植作業の様子

表1両移植法の比較
表1両移植法の比較
図2異なる放牧圧条件における、シバと主要雑草の被度推移

法人番号 7050005005207