研究活動報告詳細

「メタン脱窒・アナモックス反応による畜産廃水の窒素除去技術開発」が第9回日本農学進歩賞を受賞

情報公開日:2010年11月22日 (月曜日)

日本農学進歩賞は財団法人農学会により平成14年に創設され、農学分野におけるこれから社会的評価を得ようとする若手研究者を顕彰するものです。畜産廃水に含まれる高濃度の窒素を除去するための研究成果が認められ、平成22年11月22日に第9回日本農学進歩賞(農学会サイトへ)を受賞しました。

表彰の様子賞状

受賞者

和木 美代子(浄化システム研究チーム)

内容

背景と目的

我が国の公共用水域の窒素汚染は深刻な環境問題であり、年間消費化学肥料窒素の約1.5倍の窒素を含む家畜排泄物はその主要な汚染原因の一つとされています。さらに2001年には公共用水域への排出水に関して、水質汚濁防止法に硝酸性窒素類の排出を規制する項目が追加され、畜産廃水の窒素除去対策は緊急の課題となりました。
水系の窒素成分を微生物反応により窒素ガスとして除去する脱窒反応は最も広く用いられている窒素除去方法ですが、畜産廃水からの脱窒反応は長く困難とされていました。それは廃水中の炭素/窒素バランスが悪く、一般的な汚水処理方法では脱窒反応の過程において電子供与体となる有機炭素源が不足するためです。そこで本課題では、電子供与体の供給源としてメタンを用いるメタン脱窒反応、およびアンモニアと亜硝酸のカップリングにより窒素除去を行うアナモックス反応に着目し、これらの方法を各々メタン発酵処理の後処理、活性汚泥処理の後処理として畜産廃水処理へ適用することを試みました。

内容・特徴

  • メタン脱窒反応による畜産排水処理
    家畜排泄物のメタン発酵処理は我が国において近年導入事例が増えつつある手法です。家畜ふん尿のメタン発酵処理した後に残される液体は高濃度の窒素を含み、この汚水はメタン発酵処理によりすでに炭素源が除去されていることから、通常の硝化、脱窒処理では十分な窒素除去が困難でした。そこで前段のメタン発酵処理で発生したメタンの一部を脱窒反応のための炭素源として利用するメタン脱窒処理による、外部炭素源を必要としない窒素除去技術の開発を試みました。
    まず、マスバランスの解析によりメタンと酸素の存在下で硝酸態窒素がガス態として確実に除去されること、高効率で窒素除去を行うためのメタン/酸素比、温度、窒素組成等の条件を明らかにしました。実廃水を模倣した硝酸およびアンモニアの混合汚水をメタン脱窒条件で処理した場合において顕著な窒素成分の減少が確認され、この現象は、メタン酸化反応、脱窒反応、アンモニア酸化反応、窒素同化反応、そしてアンモニアと亜硝酸がカップリングするアナモックス反応という複雑な反応が微好気条件で同時に起こることにより見られることを明らかにしました(図1)。さらに、メタン脱窒の連続処理のためにガス分離式リアクター(図2)を考案しました。この装置ではメタンを含むバイオガスと、酸素を含む空気を装置内の二ヶ所から別々に供給し、上部の液相に達する仕切の存在によって液相に溶解しなかった未利用のガスは分離して回収が可能となります。装置の運転により未利用ガスの分離回収と液相に溶解したメタンと酸素を利用したメタン脱窒反応を確認しました。本研究でメタン脱窒の基礎条件、微生物メカニズムを明らかにし、窒素除去とバイオガスの有効利用の両立可能な装置を考案しました。
  • アナモックス反応による畜産排水処理
    活性汚泥処理は畜産排水処理として最も普及している手法ですが、その処理水には依然高濃度の窒素が含まれ、窒素除去が求められています。そこで活性汚泥処理水中に含まれる窒素を除去するために電子供与態となる有機炭素源を必要とせず、亜硝酸とアンモニアのカップリングにより窒素除去を行うアナモックス反応の当該汚水への適用を検討しました。まず、アナモックス菌集積のための種汚泥の探索を行いました。調査の結果、畜産廃水の活性汚泥処理施設においてアナモックス活性はごくわずかな活性ながらも高い確率で存在することが明らかとなり(図3)、畜産農家からアナモックス種汚泥を採取することが可能になりました。また、畜産農家で用いられている活性汚泥処理施設から排出される処理水の特徴を調査し、試算によって活性汚泥処理の後処理として直接アナモックス処理の適用した場合の窒素除去効果を示しました。最後にこのような実際の活性汚泥処理水と畜産農家の活性汚泥を種汚泥として用い、窒素除去装置を運転し、アナモックス反応を含む窒素除去が可能であることを示しました。これらの成果は畜産農家においても今後アナモックス処理が簡易に利用できる可能性を示すものです。

図1メタン、酸素存在下での窒素除去を担う微生物反応

図2ガス分離式リアクター

図3畜産廃水の活性汚泥処理施設由来汚泥におけるアナモックス活性

法人番号 7050005005207