研究活動報告詳細

「鶏舎除糞ピット用害獣侵入防止装置の考案」平成21年度文部科学大臣表彰創意工夫功労者賞を受賞

情報公開日:2009年7月23日 (木曜日)

当研究所の畜産研究支援センター業務第2科では、鶏舎の除糞ピットに設置するスクレーパの走行に同期させて扉を自動的に開閉させ、害獣の侵入を防止する装置を考案しました。
この考案について、優れた創意工夫により職域における技術の改善向上に貢献したとして評価され、平成21年度文部科学大臣表彰創意工夫功労者賞を受賞しました。

受賞者

畜産研究支援センター業務第2科
佐藤藤行
小林達弘
岡野 栄

伝達式の様子

平成21年4月16日に当所にて行われた平成21年度文部科学大臣表彰創意工夫功労者賞受賞の伝達式の様子を掲載します。

伝達式の様子1伝達式の様子2
伝達式の様子3伝達式の様子4
伝達式の様子5伝達式の様子6

内容

背景

実験鶏の安全管理については、鳥インフルエンザなどの微生物病原体に対する防疫・衛生管理の他にも鶏舎内に侵入してニワトリに危害を及ぼす有害動物によってもたらされる事故を防止することが大切である。そのため有害動物の侵入防止のため鶏舎の扉、窓の開閉には注意を払ってきたが、当業務第2科では、初生ヒナ~体重1kg程度の比較的小型のニワトリが、ケージの中から消失あるいは殺されるという原因不明の事故が時々発生し(写真1)、実験鶏の供給に支障をきたすことがあった。原因を追求した結果、野良猫や狸の侵入によるものと判明した。これらの害獣は鶏糞を搬出する屋外除糞ダクト(写真2-左)、鶏舎内半地下ピット(写真2-右)を経て、外部から屋内へ侵入していた。除糞ダクトやピットはトンネル・溝構造で、その中をワイヤーに固定したスクレーパを牽引して走行させ、鶏糞を自動的に鶏糞発酵乾燥施設へ搬送する設備である。鶏舎内の衛生管理上、スクレーパは定期的に走行させる必要があり、害獣の侵入路となる排出口を完全に閉鎖することは出来ない。そこで、新たに鶏舎の除糞ピットに設置するスクレーパの走行に同期させて扉を自動的に開閉させる害獣侵入防止装置を考案することとした。

装置の内容・特徴

考案・試作の狙いとして、

  • 害獣の鶏舎内侵入を阻止するため、侵入防止扉はスクレーパ走行時以外は確実に閉鎖状態になること。
  • 鶏糞の搬出作業に支障をきたさぬよう、スクレーパ走行時に侵入防止扉がスムーズに開くこと。
  • 設備の保守管理が容易であること。
  • 安価であること。

が挙げられる。


以上の考えにより、本装置は扉とスクレーパ上の押し上げガイドから構成し、

  • 扉の材質は、鶏糞に対する腐食防止と金属摩擦による摩耗防止のためステンレスとした。スクレーパを牽引するワイヤー(直径8mm)は、排糞走行時にモーターによって巻き取られる際に左右に振動し、かつモーター停止時は垂れるので、ワイヤーの動きを考慮して、侵入防止扉の中央部に牽引時のワイヤー通過口(直径55mm)を開け左右の振動に対応し、その下側に幅45mmのスリットを切り込んでワイヤーの弛緩に備えた形状とした(写真3)。
    また、ダクトに吹き込む風によって侵入防止扉が押し上げられないように、侵入防止扉とピット壁の間に20mmの風抜けの隙間を設けた。さらに、自重によって常時閉鎖し、かつ害獣によって押し上げられない重さ(5kg)とした(写真4)。
  • スクレーパにボルト固定した押し上げガイドが侵入防止扉を押し上げるようにした。スムーズに扉を開閉させるために、押し上げガイドの扉との接点位置は扉の高さの半分より3cm上方にし、接点の形は衝撃と摩擦を減少させる先端をU字状に丸めた形とし、なめらかに扉を押し上げるようガイド部分にゆるい傾斜をつけた(写真5)。
  • 保守管理は扉の蝶番に2回/年潤滑油を給油する程度であった。
  • 制作費は4万円(1基)と安価であった。実際に糞ピット用害獣侵入防止装置の使用を始めた(写真6)。

創意工夫の実績

本装置で最も工夫した部分は、侵入防止扉をスムーズに押し上げるガイドの設置で、走行試験を何回も繰り返すことにより、押し上げガイドのサイズと形状を決定した。また、扉についても害獣侵入の阻止可能な自重と風抜けの隙間に工夫をこらした。
このようにして、鶏舎のコンクリートピットを改造せずに直接取り付け可能な害獣侵入防止装置を試作・設置し、稼働させることができた。扉は通常は自重で閉まっていて、鶏糞の掻き出し時のスクレーパの走行時にのみこれに取り付けられた押し上げガイドでスムーズに押し上げられる。スクレーパの通過後は自重で再び閉鎖することから、猫や狸など害獣が除糞ピットを通って鶏舎内へ侵入することは不可能となり、実験鶏がこれらの有害獣によって食い殺される事故は完全に無くなった。この設備を設けて以後、約4カ年間はスクレーパの走行・鶏糞の搬出に支障は起きず、無事故で運転出来た。本装置は保守点検が簡易で、製作費も安価である。
本装置は同一の内容で実用新案として登録されている(「鶏舎の除糞設備」、第3138296号、平成19年12月5日)。

装置の写真など

施設の概略
図1 施設の概略

写真1 ケージ内のニワトリに原因不明の事故が多発
写真1 ケージ内のニワトリに原因不明の事故が多発

写真2 鶏舎の鶏糞排出ダクトとケージ下の半地下ピット
写真2 鶏舎の鶏糞排出ダクトとケージ下の半地下ピット

写真3 害獣防止扉のワイヤ通過口とスリット
写真3 害獣防止扉のワイヤ通過口(直径55mm)とスリット(幅45mm)

写真4 害獣侵入防止扉の全景(ステンレス製、板厚0.5mm、自重5kg)
写真4 害獣侵入防止扉の全景(ステンレス製、板厚0.5mm、自重5kg)

写真5 鶏糞搬出スクレーパに固定した押し上げガイド
写真5 鶏糞搬出スクレーパに固定した押し上げガイド(押し上げガイド:幅320mm×長さ1400mm×高さ130mm、鋼棒)

写真6 鶏糞搬出スクレーパの稼働(牽引)によって開いた害獣侵入防止扉
写真6 鶏糞搬出スクレーパの稼働(牽引)によって開いた害獣侵入防止扉

実用新案としても登録されています(鶏舎の除糞設備、第3138296号)。

法人番号 7050005005207