研究活動報告詳細

「飼料中リジン含量の充足により誘発される代償性成長に関する研究」が2015年度日本畜産学会奨励賞を受賞

情報公開日:2015年5月13日 (水曜日)

受賞の様子

受賞者

石田 藍子(家畜生理栄養研究領域)

研究の背景

代償性成長は、成長の制限を受けた個体が、その制限要因から解除された後に同種の同日齢の個体よりも早い成長速度を示す現象です。これまでの代償性成長に関する実験では、代償性成長誘発の再現性の確保が難しいため、その機構は十分に明らかにされていませんでした。私たちは、ブタの第一制限アミノ酸であり、成長に影響を及ぼすリジンに着目し、リジンが不足した飼料を与えた後に、リジンを充足した飼料を与えることにより代償性成長を誘発できるという仮説を立てて代償性成長の機構について研究を進めました。

研究の成果

1. ブタの飼料中リジン含量充足にともなう代償性成長時に窒素蓄積は高まる

6週齢のブタへリジン不足飼料を3週間給与した後に、リジン充足飼料を給与しました。その結果、代償性成長区ではリジン不足飼料給与時に増体が低くなり、リジン充足飼料給与後に対照区より増体が亢進し、仮説通りに代償性成長を誘発しました。さらに、この代償性成長時に体タンパク質蓄積が増加することを明らかにしました。タンパク質蓄積の増加には、タンパク合成系の増加、タンパク質分解の減少のどちらか、または両方が必要ですが、タンパク質代謝の詳細はブタを用いた実験では明らかにできませんでした。

2. 成長期のラットのリジン充足にともなう代償性成長時の骨格筋タンパク質代謝

ラットをモデル動物として用いて、リジン充足により誘発される代償性成長時の骨格筋のタンパク質代謝と、タンパク質代謝に関わるインスリン様成長促進因子(IGF)-Iおよびグルココルチコイドの濃度を調べました。その結果、代償性成長中には骨格筋のタンパク質分解の減少と、タンパク質合成の増加の両方によりタンパク質蓄積が増加することが明らかになりました。さらに、リジンの充足前に比べて充足後に血中のリジンおよびIGF-I濃度が増加すること、グルココルチコイド濃度が減少することがわかりました。これらの結果から、リジン濃度増加、IGF-I濃度増加、グルココルチコイド濃度低下の3つが骨格筋のタンパク質蓄積の増加に関与し、代償性成長が起こると考えられましたが、リジン濃度の増加のみでも代償性成長が誘発される可能性もあります。生体を用いた実験では、飼料中リジン含量の充足にともなってホルモン濃度が変化するため、リジン単独の効果を検討できないことから、次に培養筋管細胞を用いた検討をおこないました。

3. C2C12筋管細胞における代償性成長は培地中リジン充足とIGF-Iおよびグルココルチコイド濃度の変化の組み合わせにより誘発される

リジンが充足し、IGF-I濃度が高く、グルココルチコイド(Dex)濃度が低い培地で培養筋管細胞(C2C12)を36時間培養する処理を対照区としました。対照区に対して、リジン濃度が低く、IGF-I濃度が低く、Dex濃度の高い培地で18時間培養し、その後、次の4つの処理となる培地へ切り替えました:[1]18時間までと同じ培地、[2]リジン濃度の増加、[3]ホルモン濃度の変化(IGF-I濃度の増加とDex濃度の減少)、[4]リジン濃度の増加とホルモン濃度の変化。その結果、[4]リジン濃度の増加およびホルモン濃度の変化を組み合わせた処理でのみ代償性成長が誘発されました。この結果から、代償的なタンパク質蓄積は、リジン濃度の増加と合わせて、IGF-I濃度の増加およびグルココルチコイド濃度の低下の組み合わせが必要であることを明らかにしました。

法人番号 7050005005207