研究活動報告詳細

平成27年度第4回東北農研連携推進ツアー

情報公開日:2015年8月11日 (火曜日)

東北農研で開発した「リビングマルチ大豆栽培技術」は、秋播き性の高い大麦または小麦等を大豆と同時に播くことで生きたマルチ (リビングマルチ) として活用し、雑草を防除する技術です。除草剤の使用量を減らすことによる環境への負荷の低減、すなわち環境保全効果が期待できます。また、「乾田直播栽培技術」は、米生産における労働費・農機具費の削減により低コスト化を実現する技術として、農地集約による大規模化への対応が期待されています。

8月7日に実施した第4回東北農研連携推進ツアーでは、東北地域農林水産・食品ハイテク研究会の酒井眞次コーディネーター (専門、大豆育種) にも同行いただき、初めに、上記技術を導入している農事法人金田一営農組合 (二戸市、五日市組合長) を訪問しました。

平成17年に法人設立した金田一営農組合は、地区の耕作放棄地や農地の集積を進め、高品質な大豆や酒米を生産しています。平成16~19年度には「麦類をリビングマルチに用いる大豆栽培技術」の現地実証試験への協力として、リビングマルチ大豆栽培技術を導入しました。五日市組合長によれば、点在する農地の大豆栽培では雑草抑制や圃場管理が行き届かないことから、リビングマルチによる大豆栽培が有効とのこと。リビングマルチを用いた大豆栽培面積の拡大を進め、現在は20haと全国でも上位に位置しています。訪問時は、大豆条間への麦類播種法等も念頭に置きながら今後の栽培を検討されていました。生産された大豆「シュウリュウ」 (東北農研開発の豆腐に適した大豆品種) については、全量を盛岡市内の豆腐製造メーカーに出荷しており、粒の外観が優れ高品質との評価でした。一昨年からは、今後の大規模化を見据えた乾田直播技術を導入して飼料用米を栽培し、省力化を図っています。余裕が出来た労力は大豆の栽培管理にあてることで、収量増加を図ることが可能とのことでした。また6次産業化の取り組みとして始めた「二戸地域宅配ビジネス」は、現在では営農組合生産の米 (商品名、金田一う米) の宅配として存続しており、高齢化の進む地域ニーズに応える取り組みにもなっています。開発技術を導入した畑も拝見し、技術の普及にあたって多々貴重なご意見を伺うことができました。担い手の減少にともなう農地集積による規模拡大が益々進むと想定される社会状況において、クラウドサービスによるIT化や積極的な技術導入を図っている同組合の存在は貴重であり、その要望に応えられる継続的な技術協力が必要と思われます。

南部杜氏の里である岩手には多くの著名な蔵元があります。2軒目の訪問先である (株) 南部美人 (二戸市、久慈社長) では、金田一営農組合生産 (契約栽培) の特別栽培米「ぎんおとめ」を使用した日本酒を製造しています。平成20年からは地元産果実を使用したリキュール製造にも取り組んでおり、最近では陸前高田市の「北限のゆず」を原料とした商品の開発により被災地復興にも貢献しています。日本酒輸出に関する取り組み等について久慈社長にうかがったところ、日本酒輸出協会設立時は厳しい状況であったものの、近年では政府の"クールジャパン戦略"の追い風もあり、平成27年度現在で25カ国に輸出するまでになったとのこと。またフルーツを原料とする"糖類無添加"リキュールに関する意見交換では、現在原料に利用されている、酸味、香り、色調ともに強い加工用イチゴ品種「シュワークロップ」についてご紹介いただいた後、東北農研からは畑作園芸研究領域の本城正憲主任研究員が、加工用としても使用できる「北の輝」、「豊雪姫」等、東北農研の育成品種を説明し、今後はサンプル提供などによって交流を図ることになりました。この後、日本酒の製造工程を見学させていただき、貴重な経験となりました。

過疎化の進む地域において農業や食品産業の活性化を図るためには、今回訪問した先進的な取り組みをしている営農組合や地域に根付いた企業との連携が欠かせません。久慈社長から伺った「世界での日本酒の更なる普及には、ワイン文化から派生したテロノワールが必要」との考え方は、地域活性化の方策を探る上で興味深く参考となりました。

写真1
金田一営農組合での意見交換
写真2
金田一営農組合の乾田直播水田
写真3
(株) 南部美人 (二戸市)
写真4
(株) 南部美人での日本酒製造工程見学
法人番号 7050005005207