研究活動報告

日本農業気象学会2022年全国大会において、奨励賞を受賞しました。

情報公開日:2022年4月20日 (水曜日)

受賞年月日

  • 2022(令和4年)年3月23日

業績

  • 低温要求性を有する秋播型コムギの発育モデルの開発

受賞者

  • 農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター中山間営農研究領域
  • 地域営農グループ 川北 哲史

研究の概要

小麦は世界で最も重要な作物の一つであり、その発育を気象データから予測する発育モデルは農薬や肥料の散布・収穫などの作業適期の見極めやピンポイント散布による農薬・肥料散布の削減に有用です。コムギの発育をモデル化する取り組みは世界的に行われてきましたが、我が国で従来から使われている発育モデル(Maruyama et al., 2010)は九州地方等で栽培される春播型品種を対象にしており、コムギの低温要求性を考慮していませんでした。

既存のモデルでは気温の増加に対して単調に発育が進むアルゴリズムが定義されているため、低温要求性が高い秋播型品種では特に初期生育時の気温の上昇に対する発育応答を正確に反映できずに、暖冬時などに幼穂形成期以降の予測精度が悪くなる場合があります。一方で、広島県等の標高が高い中山間地域では気温が平地よりも低く、日較差も大きいため、低温要求性が比較的強い品種を栽培することがあり、低温要求性を考慮したモデルの開発が求められてきました。

そこで本研究では低温要求性を有する秋播型品種の予測精度向上を目的として、従来の播種期から開花期を予測するモデルに対して新たに低温要求関数を組み入れたモデルを開発しました。その結果、提案モデルは従来モデルよりも二乗平均平方根誤差で1-2日程度正確にコムギの開花日を予測することができ、精度は品種によって異なるものの、従来モデルと比較して提案モデルを用いることの優位性を示すことができました。本研究で得た知見はほかの作物や野菜の発育モデルの開発にも応用可能で、低温要求性を有する様々な作物の発育モデルの予測精度改善に活用することが期待されます。

日本農業気象学会奨励賞