発酵粗飼料用イネ品種「たちあやか」の採種栽培では穂肥の効果が大きい

要約

籾の少ない短穂性をもつ発酵粗飼料用水稲品種「たちあやか」の採種栽培においては、穂肥を多く施用することが採種効率向上に有効である。穂肥により一穂籾数および総籾数が増加し、比重選歩合と発芽率には影響しない。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、種子生産、施肥法、総籾数、たちあやか、穂肥
  • 担当:中央農業研究センター・作物開発研究領域・稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話 025-523-4131
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

短穂性をもつ発酵粗飼料用の水稲品種「たちすずか」および「たちあやか」は、地上部に占める籾の割合が低く、未消化籾による栄養損失が小さいと考えられ、畜産農家からの評価が高い反面、種子生産においては生産効率が低いことが普及上の問題となっている.「たちすずか」 では、晩植や幼穂形成期の窒素施肥が、籾数向上に大きな効果を示すことが報告されており、これを適用することによって種子増殖の問題は解消され、作付面積は拡大している。しかし、早晩性や草姿がことなる「たちあやか」においても、同様の栽培法によって籾数が向上するかは明らかになっていない。
そこで、「たちすずか」 において籾数増加に効果が大きい窒素施肥法が、「たちあやか」 の穂数、一穂籾数、総籾数、比重選歩合、発芽率におよぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「たちあやか」 を、窒素の総施用量を成分量で10および14kg/10a、その中で穂肥(幼穂形成期)の窒素施用量を2、6、10kg/10a(基肥-穂肥:0-10、4-6、8-2、4-10、8-6、12-2 kg/10a)として栽培すると、穂数には基肥および穂肥の施用量による影響は見られない(図1)。
  • これに対し、一穂籾数は窒素施肥量のうち穂肥の割合が高い条件で多くなる(図2)。穂肥が同じ条件においては基肥が増えるのに従い、一穂籾数が減少する傾向が見られる。
  • 総籾数は一穂籾数と同様に窒素施肥量のうち穂肥の割合が高い条件で一穂籾数が多くなり、穂肥が同じ条件においては基肥が増えるのに従い、一穂籾数が減少する傾向が見られる(図3)。
  • 比重1.13による比重選歩合および、比重1.13以上の種子の発芽率には窒素施肥量の影響はみられない(図4)。
  • これらのことから、「たちあやか」 の採種栽培においては、基肥の増施による穂数の確保よりも、穂肥の増施によって一穂籾数を増加させる施肥法を選択する方が有効と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 「たちあやか」の採種農家、(一社)日本草地畜産種子協会において参考となる。
  • この結果は2014年と2015年に中央農業研究センター北陸研究拠点(新潟県上越市)の圃場において、リン酸およびカリの施用量を10kg/10a、栽植密度を11.1株/m2として実施した試験において得られたものである。北陸研究拠点の圃場は比較的地力の高い土壌条件とされていることに留意する。
  • 穂数、一穂籾数、総籾数、比重選歩合には年次間差が見られた(図1、2、3、4)。年次間差の主な要因は、2015年は2014年より、穂肥施用から出穂までの期間が2~6日長かったことと考えられる。「たちあやか」は日長の影響をうけにくく、移植時期や栽培条件によって出穂期が変化しやすいため、穂肥の施用時期に注意する。

具体的データ

図1 施肥法が穂数におよぼす影響 (垂線は標準誤差を示す);図2 施肥法が一穂籾数におよぼす影響 (垂線は標準誤差を示す);図3 施肥法が総籾数におよぼす影響 (垂線は標準誤差を示す);図4 施肥法が比重選歩合と発芽率におよぼす影響 (垂線は標準誤差を示す)

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:松下景、長岡一朗、笹原英樹、前田英郎
  • 発表論文等:松下ら(2017)日作紀、86(1):35-40
法人番号 7050005005207