高張力鋼線電気柵はシカの牧草食害を長期に防ぎ、経済性も良い

要約

シカの牧草食害防止に適した電気柵の種別、設置・管理労力を実地検証した。耐久性と経済性において高張力鋼線柵が優れ、高さは140cm以上を確保することで飛び越えを防止し、45cm高の張出し線で接触させ柵の効果を高めることができる。

  • キーワード:ニホンジカ、牧草地、電気柵、畜産
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・鳥獣害グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ニホンジカ(以下,シカ)は2010年度以降の鳥獣種別被害額で最悪の数値を出し続け、主な被害作物である牧草の生産を脅かしている。電気柵による牧草地の防護は有効性が知られているものの、調査期間が複数年に及ぶ報告は極めて少ないため、効果の持続性を議論するには至っていない。そこで、シカによる食害が発生する牧草地において、複数種の電気柵資材を複数年にわたって設置し、電気柵への接触・侵入行動、損壊状況、防護効果の持続性ならびに資材の耐久性について解析する。さらに、防護柵導入コストおよび設置・保守作業労力を実地検証し、牧草地において電気柵を適切に利用できる技術情報を整備する。

成果の内容・特徴

  • 群馬県西部山間部、長野県境に立地する神津牧場を調査地とし、牧草地へのシカ侵入防止効果を4種類の電気柵(ポリワイヤ4段(以下、PW4)、同5段(PW5)、高張力鋼線7段(FW7)、電網)で実証試験している(図1)。
  • センサーカメラの撮影結果を用い、牧草地へのシカ侵入日数の割合を対照区(柵無設置)と比較した結果、4種類の電気柵はいずれも有意な侵入防止効果を示す。
  • シカによる侵入(脱出)は105cm高のPW5柵では跳び越えがあったが、165cm高のFW7柵ではくぐり抜けだけであり、電牧線への接触はPW5では70cm高、FW7では45cm高の張出し線に多い(表1)。シカに対する牧草地用電気柵は最上段を140cm以上の高さとすることが既存の成果から推奨され、本結果もこれを裏付けるデータである。
  • 侵入脱出時の電牧線への接触負荷でPW4柵、PW5柵の支柱は1年以内に損壊するが、FW7柵と電網柵は4年にわたり効果が持続する。
  • 推奨耐用年数をもとに電気柵の1年あたりの費用単価を計算すると、FW7柵<PW4柵≒PW5柵<電網柵の順となり、耐用年数が15年のFW7柵が最も安価となる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 普及に向け、ポリワイヤと高張力線柵について、高さ条件を合わせた追加実証が必要である。また、高張力鋼線柵(FW7)では上部の張出し線の省略や上部架線への不通電の可否、使用資材の変更、管理の省力化などでコストカットが考えられる。
  • 本研究では目安としての導入時のコストを算出しており、現在も電牧器のバッテリーや電牧線クリップなど消耗品および電網や高張力鋼線柵の防草シートの耐久性など総合的コストについて15年間の実証をめどに検証中である。
  • 初期投資額の大きいFW7のような恒久電気柵の導入を促進するにあたっては、生産者の経営計画との適合性を図り、国、自治体等による補助金、制度の活用などについて助言指導できるアドバイザーが介在するとよい。

具体的データ

図1 電気柵資材4種類の模式図;表1 ポリワイヤ5段区と高張力鋼線7段区におけるシカの侵入・脱出行動と線高別の接触頻度;表2 使用した電気柵資材の経費および設置と保守作業時間の比較

その他

  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2007~2015年度
  • 研究担当者:竹内正彦、塚田英晴(麻布大獣)、石川圭介(静岡農技研)、喜田環樹、清水矩宏(神津牧場)、福江佑子(NPOあーすわーむ)、南正人(麻布大獣)、中村義男、花房泰子、深澤充、須山哲夫(神津牧場)
  • 発表論文等:塚田ら(2016)農作業研究、51(2):39-49
法人番号 7050005005207