子実用トウモロコシ生産・利活用の手引き(都府県向け)

要約

子実を飼料利用する子実用トウモロコシの生産利用技術について解説した手引き書である。特に都府県での利活用を念頭に、現時点の品種選定、栽培・肥培管理、収穫・調製、給与技術や、現地取り組み事例を取りまとめており、耕種と畜産いずれの生産者が導入する場合も活用できる。

  • キーワード:トウモロコシ、子実、耕畜連携、水田輪作、家畜飼料
  • 担当:中央農業研究センター・飼養管理技術研究領域
  • 代表連絡先:電話0287-37-7224
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

国産濃厚飼料生産の取り組みとして、北海道ではトウモロコシ雌穂を収穫しサイレージ化したイアコーンサイレージの生産が2008年頃から開始され、最近ではより栄養価の高い子実のみを収穫する子実用トウモロコシの栽培が徐々に増えている。子実用トウモロコシを輪作体系に組み込むことにより、収穫残渣による有機物供給としての利用、圃場の排水性改善、連作障害の回避などが期待されており、国の施策としても平成30年度飼料増産総合対策事業等の中で子実用トウモロコシの生産・利用体制の構築が進められている。しかしながら、都府県では病虫害の発生や台風の影響を受け、極めて収量の少ない地域もあり、これを克服できる安定生産技術の迅速な開発と普及指導が求められている。そこで、これまでに農研機構が中心となり開発した品種選定、栽培・肥培管理、収穫・調製、給与などの技術や、現地で調査した稼働事例などを、都府県の関係者にわかりやすく示すため、「子実用トウモロコシ生産・利活用の手引き(都府県向け)第1版」を作成・配付する。

成果の内容・特徴

  • 本手引きは、東北農業研究センター、畜産研究部門、中央農業研究センターおよび複数の地域で取り組んだ現地実証試験データ等に基づき、子実用トウモロコシの生産利用技術情報を取りまとめたものである。内容は、1.子実用トウモロコシとは、2.子実用トウモロコシの作り方、3.トウモロコシ子実の使い方、4.取り組み事例、の4部構成としている(表1)。
  • 「2.子実用トウモロコシの作り方」では、東北以北と関東以南における品種選定の基本的な考え方の他、必要な圃場準備や肥培管理、家畜堆肥の利用、ミルクラインやブラックレイヤーによる収穫時期の目安、汎用コンバインによる収穫方法(図1)等について示している。
  • 「3.トウモロコシ子実の使い方」では、乾燥調製のほかフレコンラップ法によるサイレージ調製方法(図2)、乳用牛及び肉用牛(図3)への給与方法について示している。
  • 「4.取り組み事例」では、行政機関が主体となった推進事例や、現場における個別事例を紹介している。

普及のための参考情報

  • 普及対象:子実用トウモロコシ生産利用技術導入に関心のある普及指導機関、農業生産法人
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:本州で約150ha
  • その他:冊子体は都府県の研究所・普及指導員、農協の営農指導員などに合計1,000部を配付予定。また、農研機構ホームページhttp://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/130345.htmlで閲覧できる。

具体的データ

表1 子実用トウモロコシ生産・利活用の手引き(都府県向け)第1版の構成,図1 収穫時期の目安となるブラックレイヤーならびに汎用コンバインによる収穫,図2 フレコンラップ法でのサイレージ調製(ロールベールラップサイレージ技術を応用した子実用トウモロコシのサイレージ化技術),図3 トウモロコシ子実サイレージによる市販配合飼料代替が飼料効率および枝肉成績におよぼす影響(肥育後期給与)(配合飼料区を100とした場合)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018年度
  • 研究担当者:野中和久、西村和志、松﨑守夫、平江雅宏、阿部佳之、鈴木知之、黒川俊二、菅原幸哉、吉田信代、山田明央、河本英憲、内野宙、嶝野英子、出口新、服部育男、菅野勉、須永義人、森田聡一郎
  • 発表論文等:農研機構(2019)「子実用トウモロコシ生産・利活用の手引き(都府県向け)第1版」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/130345.html(2019年3月29日)