久住高原に分布する非アロフェン質黒ボク土による牧草への酸性害と酸性改良の目安

要約

大分県久住高原の草地の半数は交換酸度y1が3以上と強い酸性を示し、その多くは、主に標高700m以上の低温多雨地域に分布する非アロフェン質黒ボク土である。牧草の初期生育はy1が3以上で抑制され、酸性改良の目安としてy13未満が有効である。

  • キーワード:久住高原、草地、非アロフェン質黒ボク土、交換酸度
  • 担当:中央農業研究センター・土壌肥料研究領域・土壌診断グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8877
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

わが国に広く分布する黒ボク土は弱酸性を示し易いアロフェン質黒ボク土と強酸性を示し易い非アロフェン質黒ボク土に大別され、高温少雨条件でアロフェン質が、低温多雨条件で非アロフェン質が生成することが明らかとなっている。九州地方には主にアロフェン質黒ボク土が分布するが、大分県久住高原では非アロフェン質黒ボク土が分布し(2012年普及成果情報)、草地の牧草生育抑制要因の一つである可能性がある。そこで本研究では、酸性害(アルミニウム害)の指標である交換酸度y1の実態調査を久住高原の草地で実施し、非アロフェン質黒ボク土との関係について明らかにするとともに、新潟県の草地土壌管理基準として採用されているy1=3を指標とした酸性改良の牧草初期生育改善効果について検討する。

成果の内容・特徴

  • 大分県久住高原の標高400~1000m付近に位置する草地25圃場のうち、交換酸度y1が3以上と強い酸性を示す圃場は12圃場あり、その多くは非アロフェン質黒ボク特徴を示す圃場である(図1)。非アロフェン質黒ボク特徴を示す圃場は16圃場あり、主に低温多雨条件(国土数値情報平年値メッシュデータを基に推計)の標高700m以上に分布する(図1)。
  • ポット栽培試験における牧草(イタリアンライグラス)の初期生育は、y1が3以上の土壌ではy1が3未満の土壌よりも抑制され、地下部のアルミニウム含量は高い(図2)。
  • pH(KCl)とy1の間には密接な関係があるため、酸性改良のための石灰質資材の施用量を求める際、簡易に測定できるpH(KCl)を用いたpH(KCl)と施用量の関係式が利用できる(図3)。
  • y1が3以上(3.9~13.2)の土壌について、土壌pH(KCl)が5.0となる量の石灰質資材量を算出し施用すると、y1は3未満に改善し、イタリアンライグラスの初期生育は向上し、地下部のアルミニウム含量は減少する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • y1が牧草の初期生育へ及ぼす影響を検討した結果であるため、y1と収量との関係は別途、圃場試験で確認する必要がある。
  • アロフェン質、非アロフェン質ともにy1が3以上では牧草(イタリアンライグラス)の初期生育は抑制されるため、y13未満を目安とした酸性改良が有効である。

具体的データ

図1 大分県久住高原の草地における表土(0~15cm深)の分類と標高の関係,図2 異なるy1の草地土壌におけるイタリアンライグラスの地上部および地下部乾物重とアルミニウム含有量,図3 大分県久住高原の草地における石灰質資材施用量とpH(KCl)の関係,図4 pH(KCl)測定に基づく改善区におけるイタリアンライグラスの地上部および地下部乾物重とアルミニウム含有量

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:山口典子、久保寺秀夫、草場敬、島武男、増田泰久(元九州大学)、酒井奏(大分県南部振興局)、鶴岡克彦(大分県産業科学技術センター)、豊田剛己(東京農工大学)
  • 発表論文等:山口ら(2019)ペドロジスト、63:82-93