北海道畑作経営へのイアコーン生産の経済的導入条件

要約

イアコーンは、経営面積62.5haの北海道畑作経営の輪作体系を前提とした営農モデル試算によると、10a当たり利益(償却費差引前)が16.8千円以上の場合に小麦やてんさい、大豆、小豆の一部に替わって9.5ha~24.6ha導入される。

  • キーワード:イアコーン、北海道畑作経営、経済的導入条件、線型計画法、営農モデル試算
  • 担当:北海道農業研究センター・水田作研究領域・経営評価グループ
  • 代表連絡先:電話011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

輸入飼料価格の変動による畜産経営の収益の不安定性を緩和するため、畜産経営における飼料自給率の向上が喫緊の課題となっている。とくに粗飼料に比較して濃厚飼料の自給率は低く、国内での生産利用体制の構築が求められている。また、畑作経営では経営規模拡大を進める中で省力的な作物の導入が求められている。こうした中で、北海道を中心に濃厚飼料であるイアコーンを畑作経営で生産し畜産経営に供給する耕畜連携の取り組みが広がりつつある。そこで、北海道畑作経営におけるイアコーンの生産費を現地実証試験に基づき算出し、線型計画法を用いた営農モデル分析を通じてイアコーンの北海道畑作経営への経済的な導入条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イアコーンを北海道畑作経営で現地実証規模である27ha生産したときの生産費は現物1kg当たり23.4円、乾物1kg当たり39.4円、TDN1kg当たり49.6円となる(表1)。
  • 営農モデルは、小麦、てんさい、大豆、小豆、スイートコーンを栽培する経営面積62.5haの畑作経営であり、各作物の10a当たり利益係数(粗収益から流動費を差し引いた金額)は小麦16.8千円、てんさい30.0千円、大豆22.0千円、小豆30.0千円、スイートコーン15.0千円とする。試算においては、小麦作付面積10ha以上、てんさいと大豆は4年輪作、小豆は6年輪作、スイートコーン作付面積11.9ha、4作物以上作付け、イアコーン収穫はコントラクターへの委託という条件を設定している(表2)。
  • イアコーンの利益係数が10a当たり16.8千円になると小麦の一部に替わって9.5ha導入される。また、利益係数が19.0千円に増加すると小麦、てんさい、大豆の一部に替わって11.8ha導入される。また、利益係数が24.0千円に増加するとてんさい面積がさらに減少し、大豆の栽培がなくなり、イアコーンが16.2ha導入される。さらに、利益係数が30.0千円に増加すると、てんさい面積がさらに減少し、小豆面積も減少して、イアコーンが24.6ha導入される(表3)。
  • イアコーンが24.6ha導入されたとき、償却費差引前の所得合計はイアコーン導入前の1,387万円から1,565万円に12.8%増加する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • イアコーンを畑作経営へ導入する時の参考になる。
  • イアコーン生産費や営農モデル試算結果は、収量や畑作物価格条件に応じて変化する。

具体的データ

表1 北海道畑作経営におけるイアコーン生産費,表2 営農モデル試算の前提条件,表3 イアコーン利益係数の変化と作物別作付面積・所得合計

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:久保田哲史、大下友子、青木康浩、根本英子、竹内重吉(東京農大)
  • 発表論文等:竹内、久保田(2017)農林業問題研究、53(2):60-71