寒地での直播栽培に適する良食味水稲新品種「さんさんまる」

要約

「さんさんまる」は、北海道での出穂期が"かなり早"に属するやや低アミロースの良食味水稲品種である。短稈で耐倒伏性に優れ、直播栽培において多収性を示すため寒地における直播栽培に適している。

  • キーワード:イネ、直播栽培、低アミロース、良食味
  • 担当:北海道農業研究センター、作物開発研究領域・水稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業の担い手の減少、農地の集約化が進む中で、北海道においても省力・低コスト栽培である水稲直播栽培の面積が拡大している。現在、北海道では直播用品種として「ほしまる」、「大地の星」が普及しているが、「大地の星」は食味・品質が劣るため飼料用米、加工用米として作付けされており、主食用米の直播用品種は「ほしまる」のみである。しかし、「ほしまる」の食味は現在の北海道の主力品種よりもやや劣るため、実需者・生産者からは直播栽培可能な良食味品種が求められている。
そこで、直播栽培に適し、かつ「おぼろづき」、「ゆめぴりか」と同じ低アミロース遺伝子をもつ良食味品種の育成を行い、北海道での直播栽培の普及・拡大を図る。

成果の内容・特徴

  • 「さんさんまる」は低アミロース遺伝子(Wx1-1)をもつ「札系06007」(後の北海311号)に短稈で早生の「札系08037」を交配した後代より、直播栽培に適し、かつ良食味として選抜・育成されたものである(表)。
  • 出穂期は「ほしまる」並の"かなり早"、成熟期は「ほしまる」並の"早"である(表)。
  • 移植栽培における玄米収量は「ほしまる」、「大地の星」とほぼ同じであるが、直播栽培では「ほしまる」、「大地の星」よりも多い(表)。美唄市における現地試験(乾田直播栽培)では、「ほしまる」より約7ポイント多収である(表)。
  • 直播栽培における稈長は「ほしまる」、「大地の星」よりも明らかに短い(表および図1)。耐倒伏性は"中"である(表および図1)。
  • 穂ばらみ期耐冷性は"やや強"で「ほしまる」と同程度であり、「大地の星」より劣る(表)。割籾歩合は、「ほしまる」、「大地の星」よりも高い(表)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子は"Pia,Pii,Pik"と推定され、いもち病圃場抵抗性は葉いもちおよび穂いもち共に"強"であり、「ほしまる」よりも優る(表)。
  • 「おぼろづき」、「ゆめぴりか」と同じWx1-1遺伝子を持つため、直播栽培における白米のアミロース含有率は約15%と低く、「ほしまる」よりも約4ポイント程度低い(表)。食味は"上中"と評価され、「ほしまる」、「大地の星」に優る(表、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 北海道において直播栽培が行われている地域が対象であり、空知地域で2020年度に130haの普及が見込まれている。
  • 割れ籾が多いので、カメムシの適正な防除に努める。また、粒厚がやや薄いので米選には適切な篩目を用いる。

具体的データ

表 「さんさんまる」の特性概要,図1 現地での比較栽培の様子(2017年、美唄市),図2「さんさんまる」食味試験の結果(2014~2018年、計8回の平均値。基準品種:移植「ななつぼし」)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2018年度
  • 研究担当者:梶亮太、保田浩、池ヶ谷智仁、芦田かなえ、松葉修一、清水博之、横上晴郁、梅本貴之、黒木慎
  • 発表論文等:梶ら「さんさんまる」品種登録出願公表第33029号(2018年8月14日)