気象データに基づくワイン用ブドウ栽培支援システム

要約

圃場に設置した気象観測装置とメッシュ農業気象データの予報値を用い、ワイン用ブドウの栽培管理上重要な生育期日を予測する。減収を防ぐための重要防除時期を見逃さないための栽培支援情報として有効である。

  • キーワード:生育予測、ワイン用ブドウ、栽培支援情報システム、気象観測、発育予測
  • 担当:北海道農業研究センター・生産環境研究領域・寒地気候変動グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9212
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

100%国内産ブドウからつくられる日本ワインは原材料不足の状況が続いており、生産拡大と安定生産が求められている。栽培管理(防除や除葉などのキャノピーマネジメント)は当年の収量を大きく左右し、特に開花期に適切な防除が行えない場合に大きく減収する可能性があるが、年々の気象の差異によりその時期は2週間以上変動するため、あらかじめ生育期が予測できることは、適切な栽培管理に有効な情報となる。特に、経験の少ない新規就農者や、大規模圃場、分散多圃場管理の省力化に有効と考えられる。
そこで、本研究ではICTを活用した生産者圃場での気象の把握と、メッシュ農業気象データの予報データの活用、およびワイン用ブドウの生育予測モデルを構築し、これらを組み合わせることで、ワイン用ブドウ栽培者に有用な栽培支援情報を提供する情報システムを構築する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、生産圃場に設置した気象観測装置により取得する「気象観測データ」と、「気象予報データ」(農研機構メッシュ農業気象データ)から、発育予測モデルを用いて、ワイン用ブドウの発育ステージを予測するものである(図1)。生育データとして「萌芽期」を入力すると、「開花期」と「ベレゾーン期」の予測日を表示する。
  • 予測式として発育速度(DVR)モデルを用い、主に2016年から2018年に、北海道、山梨県、長野県、広島県のワイナリーおよび研究所で得られたのべ30地点のデータから、そのパラメータを決定した。
  • 主要10品種の予測精度(RMSE)は、萌芽期から開花期で2.4日、開花期からベレゾーン期では5.8日である(図2)。
  • 予報データを用いて発育予測を行うことで、気温経過が平年値よりも大きく異なる年でも、ひと月前には1週間以内の予測誤差で開花日を把握することができる(図3)。
  • 最大30までの圃場を登録し、それぞれ設定した品種に対して個別に発育予測を利用できる。
  • 気象観測装置を設置すると圃場の気象データを利用して生育予測が行える。気象観測装置を設置しない場合も、過去の気象値もメッシュ農業気象データを使用して生育予測を利用できる。ただしその場合は、予測日に最大で3日程度の誤差が生じる可能性がある。

普及のための参考情報

  • 普及対象:自社畑を管理するワイナリー、ワイン用ブドウ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 全国・100地点(令和5年度までの目標)
  • その他: 情報システムはアグリウエザー社が運用:利用料は5万円/年 2019年12月現在、予測が利用できる品種は次の16品種(「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」「ケルナー」「ピノ・ブラン」「ピノ・グリ」「甲州」「モンドブリエ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロー」「ピノ・ノワール」「ツヴァイゲルト」「ビジュノアール」「アルモノアール」「清見」「清舞」「山幸」)

具体的データ

図1 ワイン用ブドウ栽培支援システムの概要,図2 発育予測モデルの推定精度,図3 予報値を利用する効果

その他