WCSイネ収穫に関連した料金精算のデータを作成できる全県規模収穫管理支援システム

要約

全県規模でWCSイネ収穫にかかる煩雑な事務処理を簡略化するため、スマートフォン用作業記録作成ツールを用いて、作業対象圃場台帳から料金精算までをICT化するシステムで、進捗状況の共有にも活用できる。電子地図の作成を支援するため、大字・地番から圃場図形データを自動生成する機能を持つ。

  • キーワード:WCSイネ、耕畜連携、作業受託、スマートフォン、電子地図
  • 担当:農業技術革新工学研究センター・高度作業支援システム研究領域・高度情報化システムユニット
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

WCSイネの生産においては、コントラクターによる収穫が行われ、収穫機械の稼働率の向上等が図られている。しかし、各コントラクターは、作業を行うだけでなく、複数の畜産家から代金を受け取り、作業手数料を引いた額を複数の土地所有者に支払わなければならないため、複雑な金銭授受に関する精算処理等の事務手続きを行うことになり、大きな負担となっている。
そこで、スマートフォンを使用して現場で忘れないうちに作業記録を作成するツールを用いて、作業対象圃場台帳から精算業務に必要なデータまでの処理を全てICT化するシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムでは、最初に、データ管理者が、転作台帳から圃場地名(大字名と地番)を含む圃場台帳データ(圃場番号、地名、作付面積の項目を持つCSV形式)を作成してアップロードする。収穫作業時に、複数の作業者が、圃場毎にスマートフォンで作業完了日時、作業者、収穫数量を記録する。最後に、データ管理者が、全圃場の収穫作業に関する記録をダウンロードし、料金精算に使用する(図1)。
  • 本システムは、マスタ管理ツール、記録作成ツール、ダウンロードツールからなる。データ管理者や作業者は、インターネットを介して作業記録サーバに接続する。全てのツールはブラウザ上で動作するので、パソコン、AndroidスマートフォンやiPhone等で使用できる。
  • データ管理者は、マスタ管理ツールで記録作成に必要なデータの登録を行う。圃場台帳データをアップロードし、「自動生成」ボタンをクリックすると、圃場図形自動生成機能によって、あらかじめ用意している全県規模の圃場GIS(地理空間情報)データベースから、地名に対応する圃場図形データが自動的に生成され、電子地図で使用される。生成に失敗した圃場については、地図上をクリックして手動で生成する(図2)。
  • 作業者は、スマートフォンで記録作成ツールを実行し、圃場ごとに作業終了時に記録作成を行う(図3)。記録項目は作業者、作業終了日時、収穫数量および使用機材であるが、作業者と作業終了日時は自動で入力される。記録はコントラクター間で共有して進捗状況把握に応用できる。
  • ダウンロードツールで、圃場ごとの収穫作業記録をまとめてCSV形式でダウンロードできる。このデータは料金精算処理に利用することができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:WCSイネ収穫コントラクター、WCSイネ利用畜産農家及び県庁等行政機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 岡山県(300ha)等の、多数のWCSイネ収穫コントラクターによって収穫が行われている県。
  • その他:本システムを使うには、サーバ1台(年間3万円程度)とインターネット接続が可能なスマートフォン等が必要である。また、圃場図形自動生成機能で使用する全県規模の圃場GISデータベースは利用者がデータの取得および定期的な更新を行う必要がある。

具体的データ

図1 データの流れ,図2 データ管理ツール実行例(左:自動生成実行結果、右:図形手動生成),図3 記録作成ツール実行例

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:寺元郁博
  • 発表論文等:
    • 寺元郁博(2019)農研機構研究報告、1:77-88
    • 寺元郁博(2020)「全県規模収穫作業管理支援システム」職務作成プログラム(機構S-22)