イネウンカ類の薬剤感受性検定のための和文・英文マニュアル

要約

イネウンカ類の薬剤感受性検定法や飼育法を記載したマニュアルである。和文・英文で記載していることから、日本はもとより飛来源で薬剤抵抗性の程度(感受性の高低)を調べることに活用できる。

  • キーワード:トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ、微量局所施用法、飼育法
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・虫害グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-6075
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

イネウンカ類(トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ)の発生と被害は2005年頃から増加し、トビイロウンカは西日本を中心に、ヒメトビウンカは関東以西の広範囲で問題となっている。近年の多発要因として薬剤抵抗性の発達が挙げられている。
一般に、害虫の薬剤抵抗性は、ある場所で同じ薬剤を使い続けることで発達する。一方、ベトナム北部や中国南部から毎年飛来するイネウンカ類では、飛来源での薬剤の多用によって抵抗性が発達し、抵抗性個体群が日本で発生するという特徴がある。このような害虫では、日本のみならず、飛来源における薬剤抵抗性の程度(感受性の高低)を調べる必要がある。しかし、飛来源であるベトナムや中国では同一手法による継続的な薬剤感受性の調査は行われていない。その原因として、検定法のマニュアルが整備されていないことが挙げられる。また、国内においても適切な防除を行うために薬剤感受性検定を行う必要がある。そこで、イネウンカ類の薬剤感受性検定のための和文・英文マニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • マニュアルでは、主な薬剤感受性検定の種類とその特徴、検定のための供試虫の種の識別や採集・飼育・増殖方法、供試薬剤の調整方法、各検定方法の具体的な手順、結果の解析法を解説している(図1)。
  • 異なる場所や年次に行った薬剤感受性検定結果を相互に比較するためには、半数致死薬量(LD50値)や半数効果薬量(ED50値)を使うのが一般的である。マニュアルでは、LD50値を求める微量局所施用法(即効的な致死作用があるほとんどの殺虫剤に適用可能)(図2)に加えて、ピメトロジンなど致死作用が低い殺虫剤のED50値を求める検定法についても解説している(図1)。
  • マニュアルには和文および英文版があり、いずれも九州沖縄農業研究センターのWebサイトに公開している(図3)。
  • 日本など東アジア地域におけるトビイロウンカの薬剤抵抗性の発達程度は、飛来源のベトナム北部と同調して変化する(図4)。このことから、飛来源で薬剤感受性モニタリングを行うことで、日本に飛来するイネウンカ類の薬剤感受性の高低を予測できる。これによって、日本のイネウンカ類の防除対策を早期に立案することが可能になる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:国公立農業研究センター、病害虫防除所等の研究および発生予察担当者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本(主にイネウンカ類の被害が問題となる関東以西)およびイネウンカ類の飛来源地域(ベトナム、中国最南部など)
  • その他:本マニュアルを用いて、2015~2017年にベトナム北部(植物保護研究所)と南部(南部植物保護センター)、および日本(九州沖縄農業研究センター)で薬剤感受性検定法の研修会を開催し、手法の普及を行っている。

具体的データ

図1 和文マニュアルの目次;図2 微量局所施用法の検定作業;図3 和文(左)および英文(右)マニュアルの表紙;図4 アジア3地域におけるトビイロウンカの殺虫剤イミダクロプリドに対する薬剤抵抗性の年次推移


その他