多収で病虫害抵抗性のでん粉原料用カンショ「こないしん」

要約

カンショ「こないしん」は、でん粉原料用の主力品種「シロユタカ」よりも多収で、でん粉収量も多い品種である。でん粉の白度は「シロユタカ」並に高い。つる割病とセンチュウに強く、貯蔵性にも優れる。

  • キーワード:カンショ、でん粉、多収、つる割病、センチュウ
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・サツマイモ育種グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-7449
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

カンショは南九州の基幹作物で、特に鹿児島県ではカンショ栽培面積の約4割にでん粉原料用品種が作付けされており、でん粉関連産業は地域経済にとって極めて重要な役割を果たしている。しかしながら、高齢化による農家数の減少により、でん粉原料用品種の栽培面積は年々減少し、でん粉製造工場における原料不足が深刻化している。さらに、でん粉原料用主力品種「シロユタカ」はサツマイモつる割病に弱いため、近年、本病が多発し問題となっている。そこで原料不足を解決し、安定的なカンショ生産を行うため、「シロユタカ」よりも多収で耐病性に優れるでん粉原料用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「こないしん」は、つる割病と立枯病にやや強く、多収で、でん粉歩留が高い「九州162号」を母、多収の「九系04136-16」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • いもは"楕円形"で、皮色は"茶橙"、肉色は"黄白"、目は浅く、条溝および皮脈は"微"、裂開は"無"である。萌芽性は"中"、しょ梗の強さは"やや強"、貯蔵性は"易"である(図1、表1)。
  • 上いも収量は無マルチ栽培、長期マルチ栽培ともに「シロユタカ」よりも優れる(図2A)。でん粉歩留は「シロユタカ」並であり(図2A)、でん粉収量は「シロユタカ」よりも優れ、2割以上多収である(図2B)。でん粉の白度は「シロユタカ」並に高い(図2B)。
  • つる割病抵抗性とネグサレセンチュウ抵抗性は"やや強"、ネコブセンチュウ抵抗性はレースSP1~4に対して"強"、レースSP6-1には"中"、レースSP6-2には"やや強"、立枯病抵抗性は"中"、黒斑病抵抗性は"やや弱"である(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:カンショ生産者、でん粉製造事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積:南九州(特に鹿児島県)カンショ作地域の2000ha。でん粉原料用カンショの奨励品種として鹿児島県が採用(2019年)。
  • その他:育苗時の苗床での萌芽数が「シロユタカ」よりも少ないので、種いもの伏せ込み間隔を狭くし、伏せ込み数を多くするなどして、苗の確保に努める。黒斑病にやや弱いため、種いも消毒や苗消毒、キュアリング処理を行うなどの対策を行う。しょ梗が強いため収穫時にいもが離れにくいこと、また、いものしっぽ(尾部)も手でちぎりにくいことに留意する。南九州のカンショ産地にはネコブセンチュウのレースSP2が優占している。

具体的データ

図1 「こないしん」の塊根,表1 いもの形態および生態的特性,図2 育成地(宮崎県都城市、2014~2018年)における上いも収量とでん粉歩留(A)、でん粉収量とでん粉白度(B),表2 病虫害抵抗性

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2009~2018年度
  • 研究担当者:小林晃、甲斐由美、境哲文、境垣内岳雄、末松恵祐、田淵宏朗、髙畑康浩、藤田敏郎、吉永優、片山健二
  • 発表論文等:甲斐ら「こないしん」品種登録出願公表第33725号(2019年6月11日)