破砕の程度が異なるニンジンピューレ中の粒子が呈するテクスチャーの評価

要約

ニンジンピューレ中の粒子が呈するテクスチャーを総合して「粒子感」と定義して官能評価を行うことで、広く性状が異なるピューレのテクスチャーを数値化できる。また、クリープメータを用いた水平方向の抵抗力の測定によってピューレの「粒子感」に関連しうるパラメータが得られる。

  • キーワード:官能評価、ニンジン、ピューレ、粒子感、テクスチャー
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品品質評価制御ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8012
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

テクスチャーは食品のおいしさを決定する重要な要因の一つである。なかでも「ざらつき」「なめらかさ」といった食品中の粒子に関連するテクスチャーは、野菜や果実のピューレをはじめ様々な食品のおいしさに影響するが、こうしたテクスチャーは複合的であり、かつ変動要因が複雑であるため、その評価は容易ではない。
食品の粒子に関連するテクスチャー評価技術の開発のために、本研究では、破砕の程度の異なる5種類のニンジンピューレを用いて、粒子に関連するテクスチャーの官能評価による数値化を試みる。あわせて、簡便な機器測定法を検討する。

成果の内容・特徴

  • ホモジナイザーの回転数を2500rpmから15000rpmまで段階的に変化させ10分間破砕することで、粒子サイズや均一さが異なる5種のニンジンピューレが得られる(図1)。
  • 5種のニンジンピューレに対し、つぶつぶ感やざらつき感といったテクスチャーを総合的に表す「粒子感」という用語を用いて分析型官能評価を行うことにより、性状の差が大きい試料のテクスチャーを共通の尺度で数値化できる(図2)。
  • 粒子感の知覚にはピューレ全体の物性等も影響するため、ピューレが呈する粒子感の強さは必ずしも粒子サイズの大小と一致しない(図2)。
  • ピューレを測定用容器に充填し、クリープメータ2軸物性試験システム(株式会社山電)を用いて摺動に伴う水平方向の抵抗力を測定する。測定には底面が丸みをおびた形状の樹脂製プランジャー(図3a)を用い、試料に対して垂直荷重0.05Nをかけながら 1mm/secの速度で水平方向に摺動させることで、摺動に伴うピューレの抵抗力の変化が記録できる(図3b)。粒子サイズが大きく不均一なピューレ(2500、5000rpm試料)では抵抗力が部分的に増減しながら大きく上昇し、粒子サイズが比較的小さく均一な試料(7500、10000、15000rpm試料)では抵抗力の増加がなだらかで値も小さくなるなど、ピューレの性状と対応する結果が得られる。
  • 水平方向の抵抗力の測定結果から、粒子感の強さと関連しうる指標として、初期抵抗力(試験開始から最初に見られた変曲点における抵抗力)、最大抵抗力(測定開始時点から終了時点の間で記録された抵抗力の最大値)、平均抵抗力(摺動距離5mmから15mmの区間で検出された抵抗力の平均値)といったパラメータが得られる(図3b、表1)。

成果の活用面・留意点

  • 「粒子感」という用語を官能評価に用いることで、ざらつき感やつぶつぶ感といった粒子に関連するテクスチャーを包括的に数値化でき、含まれる粒子の形状や試料の物性が大きく異なる半固形状食品のテクスチャーを共通の尺度で評価、比較できる。
  • 水平方向の抵抗力の測定は、試料中の粒子の状態や試料の物性を総合的に反映する可能性があり、種々の半固形状食品のテクスチャー評価への応用が期待できる。
  • 水平方向の抵抗力の測定を他の試料に適用する場合は、その試料の物性や粒子特性に応じて、測定時の垂直荷重や摺動速度、用いるプランジャー等の条件を検討する必要がある。

具体的データ

図1 破砕の程度の異なるニンジンピューレ中の粒子の形状,図2 破砕の程度の異なるニンジンピューレの粒子感の強さ,図3 ニンジンピューレにおける水平方向の抵抗力の測定,表1 ニンジンピューレに対する水平方向の抵抗力の測定によって得られるパラメータ

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:中野優子、早川文代、香西みどり(お茶の水女子大)
  • 発表論文等:中野ら(2020)日本調理科学会誌、53:177-186