ドローンを用いたほ場計測マニュアル(不陸(凹凸)編)

要約

市販の安価なドローンを用いることで圃場の相対的な不陸(凹凸)を計測する方法について説明したマニュアル。ドローンによる空撮方法やその注意点、ソフトウェアを用いた処理方法について、図を多用することでわかりやすく説明している。

  • キーワード:ドローン、不陸、熊本地震、3次元計測、GIS
  • 担当:農業環境変動研究センター・環境情報基盤研究領域・農業空間情報解析ユニット
  • 代表連絡先: niaes_manual@ml.affrc.go.jp
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

2016年4月に発生した熊本地震は農業にも大きな被害をもたらし、被災農地ほ場では作物の作付ができないケースも多くみられた。特に不陸と呼ばれる農地面の凹凸が生じる場合、その程度により作業機導入や作付け可能性の判断の必要性や復旧計画等にも影響を及ぼすため、迅速に被害の程度を評価することが求められる。本マニュアルは、農業現場において、近年急速に活用が広まっている市販の安価なドローンと、撮影した複数枚の画像から対象物の3次元形状を復元する技術SfM(Structure from Motion)・MVS(Multi View Stereo)を活用することにより、ほ場に発生した不陸を簡便かつ高精度で相対的に計測する手法を説明している。

成果の内容・特徴

  • 本マニュアルでは、1.不陸計測の作業手順概要、2.ドローンによる撮影、3.地上基準点(GCP)の測量、4.SfM・MVS処理ソフトウェア(Agisoft Photoscan Professional)による3次元モデルの作成、5.QGISによる不陸量の算出という一連の作業に沿って解説をしている(図1、表1)。
  • 1)ドローンによる撮影の設定
    対象とするほ場について、ドローンを用いて写真を連続的に空撮する。その際、隣接する画像の間に80~90%程度の重複するように設定する。ドローンによる空撮は、タブレット端末を使って、インターネット地図上に容易にルート設定が可能であり、自動飛行にて行うことが可能である。
    2)撮影画像より3次元モデルを作成する方法
    SfM・MVSソフトウェアを使った処理に使う補正情報として、いくつかの基準点を設定し、相対的な高低差をオートレベル等を用いて計測する。取得された空撮画像と測量によって得られた比高、さらに地理院地図から得られた測量点の位置情報を基に、SfM・MVS処理ソフトウェアを用いて3次元モデルを作成する。
    3)ほ場の不陸量の算出方法
    SfM・MVSソフトウェアで得られた3次元モデルをフリーの地理情報システム(GIS)に読み込み、ほ場毎の平均比高を求め、作成された3次元モデルの各地点の比高との差を算出、ほ場の不陸量を面的に計測する(図2)。
  • 計測された不陸量と、公共測量等に使われる航空機レーザー測量により算出した不陸量を比較すると、両者の間に統計的に有意な差は認められない。
  • 初期費用として市販のカメラを搭載した安価なドローン(約10~20万円)と市販ソフトウェア(約50万円)、数万円の簡易測量機器のみで、圃場の相対的な不陸を安価かつ高い精度で、面的に計測可能である。運用コストは、地上における簡易測量費用および解析時間のみである。
  • 観測セットを安価に揃えることができ、可搬性、機動性に優れることから、他地域での災害発生に備えられる。さらに平時においては、ほ場の地表面比高に基づいた精密農業等での応用も可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:公設試、普及組織、民間
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国、WebにてPDFを公開するとともに、希望者にはマニュアルの冊子体を配布する。
  • その他:本手法により推定された不陸量は、絶対的な標高ではなく、相対的な比高である。そのため例えば地震前後の地面の隆起・沈降量などを計測することはできない。

具体的データ

図1 マニュアルの表紙とコンテンツ例;表1 目次一覧;図2 ドローンによるほ場毎の不陸計測結果;


その他