コメ中の無機ヒ素の簡易分析法

要約

コメからヒ素を抽出し、試験紙に塗布した試薬と反応させたときの色の変化をスキャナーで読み取ることで、簡易かつ安価に無機ヒ素濃度を定量できる。定量下限は玄米で0.09mgkg-1、精米で0.05mgkg-1である。

  • キーワード:コメ、無機ヒ素、Gutzeit法
  • 担当:農業環境変動研究センター・有害化学物質研究領域・環境化学物質分析ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8240
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、コメに含まれる無機ヒ素(亜ヒ酸とヒ酸からなる)の国際基準が決まったことから、コメ中の無機ヒ素の分析需要が急増している。無機ヒ素の分析には高額な分析機器が必要であり、操作も煩雑である。また、受託分析機関への外注も1検体2万円程度と高額である。水質分析のためのGutzeit法*を基にした安価で簡易な無機ヒ素定量キットが市販されているが、毒性の高い水銀化合物が必要であること、コメに含まれる夾雑物が分析を妨害することからコメへの適用が困難である。そこで本研究では、安全にコメ中の無機ヒ素を定量できる安価かつ簡易な分析法を開発する。
*Gutzeit法:無機ヒ素を酸と還元剤で還元水素化し、発生した揮発性の水素化ヒ素を臭化水銀や銀化合物と呈色反応させることで定量する方法。

成果の内容・特徴

  • 過酸化水素水を用いてコメ粉末から無機ヒ素を加熱抽出する。還元剤により無機ヒ素を水素化ヒ素に転換し、試験紙に塗布した硝酸銀と反応させ発色させる(図1)。
  • Gutzeit法を用いた市販の無機ヒ素分析キットでは、無機ヒ素を検出するために有毒な臭化水銀が使用されているが、本法では毒劇物に該当しない低濃度の硝酸銀水溶液を使用する。
  • 過酸化水素による無機ヒ素抽出時にGutzeit法で問題となる硫化水素も酸化除去できるため、従来法で必要であった有毒な酢酸鉛を使った硫化水素除去システムが不要となる。
  • Gutzeit法で検出効率の低いヒ酸でも、モリブデン酸の添加により効率よく検出できる。
  • 安価なフラットベッドスキャナーとオープンソースの画像解析ソフトウェアにより、コメ中無機ヒ素濃度に対応した色見本をスキャンし、各色をRGB表色系で表した際のB値から検量線を作成する。コメ抽出液から得られたB値と検量線からコメ中無機ヒ素濃度を求める。これにより利用者は毒性の高い無機ヒ素標準溶液を使っての検量線作成が不要となる。
  • 定量下限は玄米で0.09mgkg-1、精米で0.05mgkg-1である。また、玄米で0.29mgkg-1、精米で0.15mgkg-1の分析値を上回っていなければ、99.5%の信頼水準でCodex基準値(玄米0.35mgkg-1、精米0.2mgkg-1)を超えないと判断できる(図2)。
  • 1検体分析当たりの消耗品は100円程度、初期費用はスキャナーとガラス反応容器、加熱装置で10-20万円程度である。抽出含めて1日(8時間)で20~30検体の分析ができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:都道府県試験研究機関、コメ生産者団体、コメ加工事業者、コメ輸出入事業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:2017年度より農林交流センターワークショップを通じて都道府県試験研究機関、受託分析会社、コメ輸出入事業者などに対して普及を進めている。なお、分析過程で発生する水素化ヒ素は有毒であるが、閉鎖系での反応なため漏出はほぼ無いと考えられる。しかし、安全のため換気設備のある場所で分析をおこなうこと。

具体的データ

図1 簡易分析手順の概要,図2 本簡易分析法と機器分析法(HPLC-ICPMS)との分析値の比較

その他