2016-2017年冬に国内に侵入したH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスは5種類の遺伝型に分類される

要約

国内家禽と飼育鳥から分離されたH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの全ゲノム解析を行った。ウイルスの8つの遺伝子分節の組み合わせからこれらのウイルスは5種類の遺伝型に分類された。

  • キーワード:高病原性鳥インフルエンザ、家禽、野鳥、遺伝型
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2016年11月6日に鳥取県で回収されたオナガガモの糞便から国内で初めてH5N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)が分離されたのを皮切りに、2017年5月12日までに22都道府県218羽の野鳥からH5N6亜型HPAIVが分離された。家禽農場では、2016年11月28日の青森県のフランス鴨農場での発生を初発とし、翌年3月23日までの間に9道県12戸で同亜型ウイルスによる発生に見舞われた。本病の発生により、フランス鴨と鶏を合わせて約166.7万羽が淘汰された。本研究では、国内の家禽及び野鳥から分離されたH5N6亜型HPAIVの由来を解明するため、全ゲノム配列の進化系統学的解析を行った。

成果の内容・特徴

  • 2016-17年冬にHPAIが発生した12戸の家禽農場のフランス鴨と鶏及び京都競馬場で飼育されていたコブハクチョウから分離された合計89株のH5N6亜型HPAIVの全ゲノム配列を決定し、それぞれ8つの遺伝子分節の遺伝的由来を推定した。
  • 国内発生株のHA遺伝子は、2013年以降に中国の家禽で流行しているグループ(中国系統)に由来している。
  • PA遺伝子は、遺伝的な由来から4つのグループ(PA-I~IV)に分類される。PA-Iは、HA遺伝子と同じく中国系統に由来し、PA-II、III、IVは、それぞれユーラシア大陸の野鳥で流行している鳥インフルエンザウイルスに由来している。
  • NS遺伝子は、遺伝的に2つのグループ(NS-I、NS-II)に分類される。
  • その他の遺伝子(NA、PB2、PB1、NP、M)は、HA遺伝子と同じく中国系統に由来している。
  • 2016-2017年冬に国内に侵入したH5N6亜型HPAIVは、PAとNS遺伝子の組み合わせから、5種類の遺伝型に分類される(図)。

成果の活用面・留意点

  • 国内発生株の祖先は、中国の家禽で流行を繰り返し、2016年春に渡り鳥とともにシベリア等の渡り鳥の営巣地に北上し、同年秋に冬鳥の渡りとともに日本や韓国に侵入したと推定される。
  • 本成果は、農林水産省高病原性鳥インフルエンザ疫学調査チームによる「平成28年度における高病原性鳥インフルエンザ発生に係る疫学調査報告書」に活用されている。
  • 近年のH5亜型HPAIVは、一部の遺伝子分節に野鳥で流行している鳥インフルエンザウイルスに由来しているものが存在していることから、HPAIVの生態の解明には、野鳥が保持しているウイルス調査が重要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:西藤岳彦、竹前喜洋、常國良太、谷川太一朗、内田裕子、峯淳貴
  • 発表論文等:Takemae N. et al. (2017) Virology 512:8-20