米麹を利用したノングルテン米粉パンの製造法の汎用性の向上

要約

米麹のプロテアーゼ活性を利用して製造するノングルテン米粉パンの製造技術の汎用性と品質の向上を図るため、生地に添加する米麹やプロテアーゼの種類や量の調節、パンの膨らみや気泡の細かさを阻害しない副材料の選定、アレンジパンの提案を行う。

  • キーワード:ノングルテン米粉パン、米麹、米粉、グルテンフリー、プロテアーゼ
  • 担当:次世代作物開発研究センター・稲研究領域・米品質ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8951
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

米粉の消費拡大、および小麦アレルギーやセリアック病患者に対応した食品開発のニーズは高い。これまでにグルテンや増粘多糖類等を使用せず、米麹を用いて製造するノングルテン米粉パンの製造技術(麹等カビによる前発酵行程を含む米粉パンの製法(特許第5713255号))を開発した。この製法で製造したパンは独特の香り、あるいは固いといった欠点があった。この技術の汎用性とパンの品質向上を目指し、パン生地に添加する米麹やプロテアーゼの種類や量の検討、副材料の選定、アレンジパンやアレンジメニューの開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 米麹を利用して作るノングルテン米粉パンの製造は、「麹等カビによる前発酵行程を含む米粉パンの製法(特許第5713255号)」を基本技術としており、米粉、米麹、水を混合したパン生地の作成、生地の加熱・保温(45~55℃、5~15時間)、イースト発酵、焼成の工程を含む(図1)。米麹の代わりに食品添加用プロテアーゼ製剤を用いて作ることも可能であり、どちらを用いても食感は大きく変わらない。
  • プロテアーゼ活性による米粉のタンパク質の部分分解、およびパン生地を45~55℃で5~15時間保温することにより生地の粘度が高くなる。粘度が高いパン生地はイースト発酵で生じたガスを保持できるため、グルテンを加えなくても気泡構造をもつ膨らんだパンが製造できる(図2)。
  • 食品添加物用プロテアーゼ製剤を使用する場合、最適添加量の添加により、各種のプロテアーゼ製剤で膨らみがよく、気泡の細かいパンを作ることができる(図3)。米麹の場合も同様に添加量の調節により、種々のメーカーの米麹が使用可能である。
  • パンの膨らみや気泡の細かさを阻害しない副材料や具材料の添加、あるいはパンの調理により、ノングルテン米粉パンの品質を向上できる(例:油脂の添加による軟らかさや風味の向上、パンの加熱調理による食感の変化)。それらのノングルテン米粉パンアレンジパンは、パンフレット「米粉と米麹で作るノングルテン米粉パン―米粉パンを美味しく食べる」で紹介している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • この製法には、粒子が細かく、デンプンの損傷度が小さい米粉が適している。また、中程度のアミロース含量(15-20%)の米から調整した米粉を用いるとパンの膨らみがよい。
  • パンフレット「米粉と米麹で作るノングルテン米粉パン―米粉パンを美味しく食べる」は、希望者に配布可能である。

具体的データ

図1 米麹利用のノングルテン米粉パンの製造方法;図2 プロテアーゼ添加の有無とパン生地の保温温度が、(A)生地の粘度および(B)パンの膨らみに及ぼす影響;図3 さまざまな食品添加物用プロテアーゼ製剤を用いて製造したノングルテン米粉パン;図4 米麹利用のノングルテン米粉パンの食味・風味を向上させるアレンジパンの紹介パンフレット

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:荒木悦子、鈴木保宏、梅本貴之、鈴木啓太郎、濱田茂樹
  • 発表論文等:
  • 1)荒木ら「小麦粉代用米粉及びグルテンフリー米粉パンの製造方法」特開2016-67228(2016年5月9日)
    2)農研機構(2018)「米粉と米麹で作るノングルテン米粉パン」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/082193.html(2018年1月1日)