ニホンナシ「あきづき」と「王秋」に発生するコルク状果肉障害の特徴

要約

ニホンナシ「あきづき」と「王秋」に発生するコルク状果肉障害は、果実重の大きい果実に多く発生し、ジベレリン塗布剤処理により増加する。「あきづき」では成熟の遅い果実に発生が多い。

  • キーワード:ニホンナシ、生理障害、ジベレリン、成熟期、果実重
  • 担当:果樹茶業研究部門・生産・流通研究領域・栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ニホンナシ「あきづき」と「王秋」は、農研機構育成の赤ナシ品種で、両品種ともに果実品質が優れ、日持ち性も良いことから、栽培面積が増加している。しかしながら、近年、果肉および果皮直下にコルク状の斑点が生じる障害(コルク状果肉障害)(図1)の発生が報告されており、障害発生要因の解明や対策技術の開発が望まれている。
コルク状果肉障害は、果皮直下に発生する場合を除き外観から障害の有無を確認することができないため、正確な発生状況を把握するためには、果実を切断し詳細を調査する必要がある。本研究では、果実を5mm厚にスライスして障害の発生状況を詳しく調査し、果実品質や成熟期との関係を解析するとともに、ジベレリン塗布剤処理(GA処理)の影響について調査する。

成果の内容・特徴

  • コルク状果肉障害は、「あきづき」、「王秋」ともに果実重の大きい果実に多い(図2)。また、大きい果実ほど、直径5mm以上の小豆大のコルクの発生個数も多い。
  • カラーチャートで果皮色3.5を目安として収穫適期の果実を2回に分けて収穫すると、コルクの発生個数は、「あきづき」では1回目収穫よりも2回目収穫の方が多く、成熟の遅い果実に多い傾向がある。「王秋」では「あきづき」ほど成熟期による違いは明確ではない(図2)。
  • コルクの発生位置は、両品種ともに果実全体に分布するが、赤道面よりもややこうあ部側に多い(図3)。
  • GA処理は、両品種ともに収穫果実の果実重には影響しないが、障害果実1果当たりのコルク個数を有意に増加させ障害程度を重症化させる(図4)。
  • コルク状果肉障害の発生状況は両品種においてほぼ同様の傾向を示すことから、「あきづき」と「王秋」のコルク状果肉障害は、同じ要因によるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 大きい果実やGA処理果でコルクの発生が多いことから、栽培現場においては、過度な大玉生産やGA処理を控えることが障害軽減につながると考えられる。
  • 成熟期の遅い果実に発生が多いことについては、今後原因等詳細を解析する予定である。

具体的データ

図1 コルク状果肉障害の様相?図2 果実重別のコルクの発生個数と大きさの分布(2012~2013年、茨城県つくば市)?図3 果肉におけるコルク発生位置(2012年、茨城県つくば市)?図4 GA処理がコルク状果肉障害発生果実における1果当たりコルク個数に及ぼす影響(2013年、茨城県つくば市)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:羽山裕子、三谷宣仁、山根崇嘉、井上博道、草塲新之助
  • 発表論文等:羽山ら (2017)園学研、16(1):79-87