リンゴにおける官能による果汁の多さの客観的評価方法

要約

リンゴ果実では、果肉組織の含水率が高く、かつ果肉が硬く、さらに果肉組織の細胞間隙に水分が多く含まれる場合に果汁を多く感じる。果肉の含水率、硬度、細胞間隙溶液量を測定することで、品種や果実による果汁の多さの違いを比較することができる。

  • キーワード:含水率、硬度、細胞間隙溶液、クリスプ、ジューシー
  • 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

収穫直後のおいしいと感じるリンゴは、果肉が締まっていて食べると果汁があふれ出る。このような歯触りの肉質を「クリスプ」と言い、リンゴの品質を評価する上で最も良い肉質とされている。これまでの果実品質評価では、硬度を測定し、硬い方が肉質は良いとされている。しかし、貯蔵して水分が蒸発した場合でも果肉は硬くなることから、肉質の善し悪しは、食べた時の果汁の感じ方による。これまでの果実品質の評価方法では、貯蔵方法が異なる場合や、品種による肉質の差を十分に表すことができなかった。そこで、食べた時に感じる果汁の量を客観的に評価する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 収穫直後から一定期間貯蔵した後の果実まで、10品種の様々な状態の果実を用い、官能により果汁の多さを評価すると、果汁の官能評価値は、含水率、果肉硬度および果肉組織の細胞間隙溶液量と高い相関があり、これらの値をかけ合わせることで、果汁の多さを推定することができる(図上)。
  • 含水率は、主に果肉細胞の中の水分量を表している。果肉が軟らかい場合は、果肉組織の細胞同士の結合がゆるんだ状態、または細胞に弾力がある状態である。咀嚼しても細胞がバラバラになるか変形するだけで、細胞は破砕されないため果汁を感じない。細胞間隙溶液は、咀嚼して最初に感じる果汁を表している。
  • 含水率が高いほど果汁は多いと感じる。しかし、果肉硬度が12ポンドを下回る場合や、細胞間隙溶液量が4%を下回ると、含水率が高くても急激に果汁を感じにくくなる。
  • これら3つの形質を測定することで、官能による果汁の多さを客観的に評価でき、肉質の違いをより詳しく説明することができる。

成果の活用面・留意点

  • 含水率は、果肉組織からくり抜いた果肉切片(直径20mm、厚さ24mm)を90°Cで24時間乾燥させた重量差から算出する。細胞間隙溶液量は、果肉切片を1,500 x gで60分遠心分離して得られる溶液量で表す。

具体的データ

その他

  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:岩波宏、森谷茂樹、岡田和馬、阿部和幸、川守田真紀(岩手農研セ)、佐々木真人(岩手農研セ)、守谷友紀、本多親子、花田俊男、和田雅人
  • 発表論文等:Iwanami H. et al. (2017) Sci. Hort. 214:66-75