ブドウ「ピオーネ」果房への夜間のLED光近接照射による果皮色向上

要約

ブドウ「ピオーネ」果房にLED光を夜間に近接照射することで、着色関連遺伝子群の発現量が増加して果皮色が向上する。着色関連遺伝子群の発現量は日内変動しており、発現量が増加しやすい夜間のLED光照射は果皮色向上に効果的と考えられる。

  • キーワード:アントシアニン、温度、果皮色、発光ダイオード、ブドウ
  • 担当:果樹茶業研究部門・ブドウ・カキ研究領域・ブドウ・カキ育種ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ブドウ果皮色の良否は果実成熟期間中の気象条件の影響を強く受け、この時期の高温や日照不足は着色不良の原因となる。これまでに、低温と光照射の同時処理により着色関連遺伝子群の発現量が相乗的に増加し、着色が促進することがin vitro条件下で明らかになっている(2012年度研究成果情報http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/142b0_03_08.html)。この知見は、低温条件下における人工光照射が栽培レベルでの果皮色向上にも有効である可能性を示唆する。そこで本研究では、気温の低下する夜間から早朝のLED光照射による「ピオーネ」の果皮色向上効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • LED光源の仕様は、青色LED(ピーク波長:470nm)、赤色LED(ピーク波長:630nm)であり、光源から最も近い果粒(約5cm)の光量は、青色光で26~41μmol m-2s-1、赤色光で34~42μmol m-2s-1である。照射期間は着色開始期(7月中下旬)から収穫日(8月下旬)であり、照射時間帯は18~9時(22.9~28.5°C)である。テープ状のLED資材を光源とすることで、果房への近接照射が可能である(図1A)。
  • 収穫時の果皮アントシアニン含量は、無照射区と比較してLED光照射区で有意に高い(図1B)。
  • LED光照射区の着色関連遺伝子群の1日の累積発現量は無照射区に比べて概ね高い(表1)。
  • VlMYBA1-3等の日内の発現量は、夕方から日の出後の午前中にかけて高くなり、昼間に低くなる傾向がある(図2)。
  • 以上のことから、多くの着色関連遺伝子の発現量は日内変動しており、発現量が増加しやすい夜間のLED光照射は果皮色向上に効果的と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 光を用いた着色系品種の着色不良対策技術の開発に資する基礎資料となる。
  • 実用化のためには、果皮色向上に最適な光質や照射時間帯等の詳細な検討を行うとともに、果皮色向上効果の年次間差や本技術の適用可能品種、コスト等について検討が必要である。

具体的データ

図1 テープ状のLED資材を用いた果房への近接照射状況(A)、およびLED光照射が「ピオーネ」果皮アントシアニン含量に及ぼす影響(B);表1 夜間のLED光照射が「ピオーネ」果皮における着色関連遺伝子群の1日の累積発現量に及ぼす影響;図2 VlMYBA1-3発現量の日内変動に及ぼす夜間のLED光照射の影響とそのときの気温変動

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2009~2017年度
  • 研究担当者:東暁史、伊東明子、森口卓哉、薬師寺博
  • 発表論文等:Azuma A. et al. (2012) Acta Hort. 956:341-347