オイル生産藻類残渣のペレット化技術

要約

オイル生産藻類からオイル成分を抽出した後の残渣をペレット化する技術である。残留するオイル成分が原因で従来法ではペレット化が困難であった藻類残渣を、粉砕・加水後、成型・乾燥することによりペレット化を実現し固形燃料としての利用が可能となる。

  • キーワード:オイル生産藻類、固形燃料、藻類残渣ペレット、品質規格
  • 担当:農村工学研究部門・地域資源工学研究領域・地域エネルギーユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7509
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

微細藻類の一部の種類では、生育過程でオイルに変換・利用可能な成分を藻類体の30~70 %と高含有率で生成する。これらの微細藻類は食糧生産として利用できない土地で生産可能であるため、そこから抽出・精製して得られる藻類オイルは、食料生産と競合が少ない次世代バイオ燃料として期待されている。一方で、藻類オイル生産過程ではオイル成分生産量の0.4~2.3倍という大量の藻類残渣が排出され、その実用化においては、この残渣を簡易に処理・処分する技術が必要である。本技術は藻類残渣のペレット化技術であり、藻類残渣の有する高い発熱量に着目し、燃料体としての利用を可能とするものである。

成果の内容・特徴

  • オイル生産藻類(「Botryococcus braunii (BOT-22)」)のオイル抽出残渣(以下、藻類残渣)自身が含有するオイル成分により、ペレタイザー等を用いる従来の方法でペレットを成型したところ、原料に1%藻類残渣を混合させただけでも、すぐに崩れる脆いペレットしか作成できない(図1(1))。
  • 崩れないペレットを成型する方法としては、以下のとおりである。1)藻類残渣を粒径2 mm以下に粉砕する、2)水を全体に浸潤させ粘土状にする、3)粘土状にしたものを円筒形に成型する、4)乾燥させる、5)3 cm程度の長さに切断する(図1(2))。
  • 藻類残渣ペレットの高位発熱量、微粉率および機械的耐久性は、それぞれ、20.4 MJ/kg、0.0%および99.5%であり、いずれも木質ペレットの品質規格(それぞれ、17.6 MJ/kg以上、1.0%以下および97.5%以上)を満足する(表1)。
  • 藻類残渣ペレットのかさ密度および硫黄や窒素、塩素などの成分値はそれぞれ、410 kg/m3および0.3%、2.7 %、0.7%であり、木質ペレットの品質規格(それぞれ、650 kg/m3以上および0.04%以下、0.5%以下、0.03%以下)を満たさない(表1)。
  • 藻類残渣ペレットを使用する際には、木質ペレットに混合して使用することで、SOx、NOx、HCl等の発生を規格が想定したレベルに抑えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、「Botryococcus braunii (BOT-22):筑波大学で確立されたオイル生成能力が高い系統」の藻類残渣を用いており、他のオイル生産藻類に関しては確認を要する。
  • 本技術による燃料化は、農業用ハウスのボイラー燃料としての利用などが考えられ、藻類オイル生産が地域農業への貢献や農村地域の活性化につながることが期待される。
  • 木質ペレットへの藻類残渣ペレットの混合率は、燃焼時に発生する排ガスを考慮すると、簡易な排ガス装置の設置により10%まで上げることが期待できるが、今後調査が必要である。
  • 本技術で作成された藻類残渣ペレットはその性状等から木質ペレットとの併用を基本とするため、木質ペレットが供給されている地域限定の技術である。

具体的データ

図1 藻類残渣のペレット化技術?表1 藻類残渣ペレットの性状

その他

  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2013~2014年度
  • 研究担当者:折立文子、山岡賢、出村幹英(筑波大)、中村真人
  • 発表論文等:
    1) 山岡ら(2016)農業農村工学会論文集、No.301 (84-1):IV_1-IV_2
    2) 山岡賢、折立文子「バイオマス燃料体の製造方法およびその方法により製造されたバイオマス燃料体」特願2016-011369 (2016年1月25日)