摩耗量の測定値に基づく無機系表面被覆工の摩耗進行予測手法

要約

無機系表面被覆工の摩耗速度は通水初年度が最大値を示し、その後一定値に収束する傾向を示す。この摩耗進行特性に基づき、通水から数年間の摩耗量測定値を用いた無機系表面被覆工の摩耗進行予測手法を提案する。

  • キーワード:無機系表面被覆工、摩耗進行、摩耗進行予測
  • 担当:農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7569
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

無機系表面被覆工は農業用コンクリート開水路の補修の60%以上を占める主要工法である。無機系表面被覆工の耐摩耗性については、開水路の補修補強マニュアルの中で年間摩耗速度を0.25mm/年未満とする目安が示されている。しかしながら、その摩耗進行特性に関する定量的なデータは少なく摩耗進行の実態は明らかではない。無機系表面被覆工の摩耗進行予測ができれば、摩耗進行の大小に応じた維持管理計画の立案ができる。摩耗量が少ない水路では共用期間の伸長を、摩耗量の大きい水路では予防保全的な対策を実施すれば機能保全コストを低減できる。本研究では、全国10箇所の無機系表面被覆工の摩耗量測定結果から無機系表面被覆水路の摩耗進行特性を明らかにするとともに実測摩耗量を用いた摩耗進行予測手法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 図1(a)に鬼怒川南部水路(栃木県真岡市)での無機系表面被覆工の通水開始から5年間の年間摩耗速度v mm/年(通水1年間で表層が削り取られる深さ)を示す。摩耗速度は通水初年が最大となりその後低減する。同様の傾向は他の現場でも見られた。これは、無機系表面被覆工では表層に近いほどその品質が低下し、摩耗に対する抵抗性が低下するためと推定する。無機系表面被覆材料の促進摩耗試験の結果からも表層に近いほど摩耗速度は大きくなる(図1(b))。
  • 全国10箇所のレーザ摩耗測定による無機系表面被覆工の年間摩耗速度を被覆材料別に図2(a)に示す。全国の被覆材の中でも使用量の多いAF、TN、AGの中央値はそれぞれ、0.19、0.07、0.12 mm/年となり、マニュアルの示す目安である0.25mm/年未満となる。無機系表面被覆工の平均的な摩耗進行の一つの目安値となる10箇所の平均摩耗速度は0.18 mm/年である。図2(b)に年間摩耗速度の全データの分布を示す。平均摩耗速度が0.3 mm/年を超えるデータは全体の上位約15%に含まれる。
  • 図3に無機系表面被覆工の摩耗量の測定値に基づいて摩耗量を予測するためのフローを示す。通水開始から5年間を目安にレーザ摩耗測定を行いその結果から累積摩耗量を予測する。ただし、測定頻度は通水開始年の摩耗速度に応じて調整する。通水初年の摩耗速度の閾値として0.3 mm/年を設定し、これを超える場合は毎年測定とした。この閾値は図2(b)に示すように全データの上位約15%分位点の相当し、これを平均にくらべ値が大きく注意が必要な値とした。摩耗量の予測値は摩耗速度関数を積分し求める。
  • 図4に鬼怒川南部水路の側壁に対する図3に基づく累積摩耗予測結果を示す。平均的には累積摩耗の傾向を捉えている。

成果の活用面・留意点

  • 成果の内容は無機系被覆水路の側壁の摩耗を対象とする。
  • 図3の測定頻度の閾値は、摩耗測定値の集積とともに精度の向上が期待される。
  • 無機系被覆水路のスパン内、複数スパン間での摩耗進行のばらつきに関するデータはほぼ皆無である。被覆水路の摩耗進行の代表値を求める方法の確立が今後の課題である。

具体的データ

図1 摩耗速度と通水年数の関係;図2 無機系被覆工の年平均摩耗速度;図3 摩耗速度の実測と摩耗予測式の作成;図4 摩耗進行予測

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(生産システム)
  • 研究期間:2012~2016年度
  • 研究担当者:中嶋勇、森充広、川上昭彦、川邉翔平、渡嘉敷勝
  • 発表論文等:浅野ら(2017)水と土、180:66-71
法人番号 7050005005207