紫外線除去フィルム被覆による濃赤色リーフレタスの生育促進と被覆解除後の着色回復

要約

春どり作型において紫外線除去フィルムを被覆して赤色リーフレタスを栽培すると濃赤色品種では生育が促進する。葉のアントシアニン含量は被覆によって低下するが、収穫前に被覆を解除することで増加する。

  • キーワード:UVカットフィルム、アントシアニン、品種間差、トンネル栽培
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜生産システム研究領域・露地生産ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6574
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

濃赤色リーフレタスは、加工・業務用を中心に周年ニーズがあるが、低温下での生育が遅く、厳寒期定植春どり作型での栽培には不向きなため、生産地域や時期はごく限られている。一方、紫外線除去フィルムは、レタスの菌核病や灰色かび病の発生を軽減することに加え、ホウレンソウ等一部の野菜では生育促進効果を有することから、濃赤色リーフレタスの露地トンネル栽培での活用が期待される。しかし、アントシアニンを含む赤色リーフレタスの栽培では、紫外線除去フィルム被覆により葉の着色が損なわれる問題がある。そこで、紫外線除去フィルム被覆下の赤色リーフレタスの生育および着色反応の品種間差異を明らかにするとともに、濃赤色品種における被覆解除後の着色の変化を明らかにして、濃赤色リーフレタス栽培における紫外線除去フィルム利用技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 赤色リーフレタスの淡赤色品種では、紫外線除去フィルムを被覆しても株重に影響がない。一方、濃赤色品種では、紫外線除去フィルムの被覆によって株重が2倍程度増加する(図1)。
  • 葉のアントシアニン含量は、紫外線除去フィルムの被覆によって淡赤色品種で約3割、濃赤色品種で約7割低下する(図2)。
  • 濃赤色品種では、紫外線除去フィルムの被覆を解除すると、積算紫外線量の増加に伴って葉のアントシアニン含量は増加する。積算紫外線量がおよそ2.5 MJ/m2以上になるとアントシアニン含量の増加は鈍くなり、3.5 MJ/m2を上回ると明らかな増加は認められない(図3、図4)。

成果の活用面・留意点

  • 紫外線除去フィルムを外して着色の回復を図る日数は、着色回復に要する積算紫外線量(2.5~3.5 MJ/m2)とこの時期の1日あたり積算紫外線量(晴天日で0.55~0.65 MJ/m2)を踏まえると、4~6日が目安となる。
  • 濃赤色リーフレタス品種は、低温下での栽培では着色過剰になりやすい問題があるが、本成果を利用することで需要先のニーズに応じた着色の調整が可能となる。
  • 紫外線除去フィルム被覆を解除して着色の回復を図る期間は、凍霜害の発生に注意する必要がある。

具体的データ

図1 紫外線除去フィルムの被覆が株重に及ぼす影響?図2 紫外線除去フィルムの被覆が葉のアントシアニン含量に及ぼす影響?図3 対照(左)と紫外線除去(中央)の株および紫外線除去を解除して3日目後の株(右)?図4 濃赤色リーフレタス品種「ブラックローズ」(左)および「バラエティ濃赤」(右)の紫外線除去フィルム被覆解除後の積算紫外線量とアントシアニン含量との関係

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:佐藤文生、山内智史
  • 発表論文等:佐藤、山内(2017)園芸学研究、16(2)、169-175