食感・形状の定量的評価法を用いた多様なキュウリの果実品質の特徴付け

要約

キュウリ果実の食感をクリスプネスインデックスやフラクタル次元解析、形状を楕円フーリエ法・主成分分析によって定量的に評価することで、世界の多様なキュウリ品種・品種群の果実品質が詳細に特徴付けられる。

  • キーワード:キュウリ、定量的評価法、食感、形状、果実品質
  • 担当:野菜花き部門・野菜育種・ゲノム研究領域・ウリ科・イチゴユニット
  • 代表連絡先:電話 050-838-6574
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

キュウリの果実は、シャキシャキ、パリパリといった擬音語で表現される硬さ以外の食感(クリスプネス)や、市場での品質評価に大きく関わる果実の基部や先端部の形の定量的な測定が非常に難しいため、人による官能評価が主流である。近年、食感ではクリスプネスインデックス(CI値)やフラクタル次元解析、形状では撮影画像を用いた楕円フーリエ法・主成分分析によって、それらを定量的に評価できる手法が開発されている(Iwata and Ukai 2002; 堀江ら 2004; Yoshioka et al. 2009)。そこで、国内外の多様なキュウリ品種・品種群について、果実の食感と形状の詳細な特徴付けを網羅的に行う。

成果の内容・特徴

  • 可食部のほとんどをしめる果肉の硬度の品種間差は小さいが、CI値の品種間差は大きい。各品種群の特徴を有する国内外の品種においてCI値を算出すると、日本型現行品種(現在日本で栽培されているF1品種)で高く、日本型固定品種(以前日本で栽培されていた古い品種)では高いものと低いものにばらつく一方で、海外で栽培されている英国温室型品種「Marianna RZ」、ベイトアルファ型品種「Atar」、スライス型品種「Poinsett 76」、ピクルス型品種「Patton」や、インド由来の雑草型キュウリ系統「CS-PMR1」では全て低い(図1)。
  • 未熟果(100g前後の果実)の硬度は各品種群間に特徴的な違いはないが、果実が肥大し大果(肥大終了時の果実)や熟果(開花後40日程度以降の果実)になると日本型現行品種は硬度を維持するのに対し、英国温室型品種とベイトアルファ型品種の硬度は下がる。日本型現行品種のCI値は、未熟果から熟果まで高い値のまま推移するのに対し、英国温室型品種とベイトアルファ型品種では低いまま推移する(図2)。
  • 楕円フーリエ法・主成分分析により、果実の形状を特徴付けられる変異が抽出され、図3のように可視化される。その結果、品種の主成分得点から品種群の特徴的な形状が把握され、日本型現行品種の果実は細長く基部や先端部が丸い、日本型固定品種では基部が肥大する、ベイトアルファ型品種では長さと果実中央径の比(L/D比)が大きく、英国温室型品種では基部が細い傾向を示す(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 食感や果実形状といった品質の定量的評価は、官能評価と高い相関が認められており(Yoshioka et al. 2009)、かつ人為的な測定のばらつきを抑えることができるため、育種における果実品質の正確な選抜に活用できる。
  • 果実の食感や形状は環境に影響を受けることがあるため、指標値の年次変動等には留意する必要がある。

具体的データ

図1 未熟果における多様なキュウリの果実物性の違い?図2 果実の発達段階における各品種群の果実物性の推移?図3 楕円フーリエ記述子・主成分分析法を用いて解析した多様なキュウリの形状のばらつき

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2016年度
  • 研究担当者:下村晃一郎、杉山充啓、川頭洋一、吉岡洋輔
  • 発表論文等:Shimomura K. et al. (2016) Sci. Hortic. 199:133-141