八重咲きトルコギキョウの花弁数を増加させる温度制御技術

要約

八重咲きトルコギキョウの花弁数は生殖成長期初期1週間の日平均気温を下げると増加する。第1段花を指標として時期を限定した低温処理により、高温期においても花弁数が増加したトルコギキョウの省エネルギー生産が可能となる。

  • キーワード:トルコギキョウ、花弁数、温度制御、開花、省エネルギー
  • 担当:野菜花き部門・花き遺伝育種研究領域・品質育種ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6811
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

市場に流通するトルコギキョウの大半が八重品種であるが、その花弁数は変動しやすく減少が問題となる。安定して花弁枚を確保できる栽培環境が明らかになれば、トルコギキョウの高品質生産につながる。一方で収益の向上には環境制御のエネルギーコストを考慮する必要がある。本研究ではトルコギキョウ花弁数に影響する栽培温度とその時期を明らかにし、エネルギーコストを抑えた高品質生産法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 八重咲きトルコギキョウの花弁数は20°Cから25°Cの範囲において日平均気温と強い負の相関を示す(図1)。昼温と夜温はともに花弁数に影響を与える(データ略)。
  • 同時に栽培を始めた同一品種の集団内で早い成長を示す個体において、最初に分化した花蕾が約4mmに成長した時期を生殖成長期初期とする。生殖成長期初期から1週間高温条件下で生育させ、その後4週間低温条件下で生育して開花した頂花から3番目の花の花弁数は、5週間連続して高温条件下で生育させた場合と同程度に減少する(図2I、II、処理区Aおよび処理区G)。
  • 生殖成長期初期から1週間低温条件下で生育させ、その後4週間高温条件下で生育させた場合には、5週間連続して低温条件下で生育させた場合と同程度に花弁数が増加する。温度処理が花弁数に与える影響は、生殖成長期初期直後の1週間が最も高い(図2I、II、処理区Fおよび処理区H)。
  • 生殖成長期初期から5週間連続して低温条件で生育させた場合には、連続して高温条件で生育させた場合に比べて開花までの日数が増加する(図2III)。5週間の間に1週間のみ温度条件を変化させても、開花までの日数に有意な変化は生じない。
  • 第1段花の花蕾が約4mmに成長した時期には、第2段花の花蕾は約2mmに成長している(図3A)。その5日前から生育温度を違えて栽培すると、第2段花に低温条件の影響による花弁数の増加が認められるが、第1段花には認められない(データ略)。温度処理から5日目の切片から判断すると、気温が花弁数に影響を与えるステージは花序もしくは萼形成期から第一層花弁形成期である(図3A)。
  • トルコギキョウは第1段花と第4段花を切除し、第2段花と第3段花を着けて出荷する場合が多い。同一品種集団内で生育の早い個体の第1段花を目視で確認した直後から3週間低温条件で栽培すると、複数の枝における第2段花と第3段花の花弁数が増加し、商品価値の高い花弁数が多い八重品種の、省エネルギー的かつ安定的な生産が可能である(図3B)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験で使用したトルコギキョウ品種は「キングオブオーキッド」、「ミンク」、「パレオピンクフラシュ」、「オーブカクテル」、「ロジーナグリーン」、「クラリスピンク」、「ボヤージュホワイト」、「ハピネスホワイト」である。いずれの品種においても低温処理は花弁数を有意に増加させる。
  • 人工光下でも自然日照下においても日平均気温と花弁数には負の相関が認められる。

具体的データ

図1 日平均気温と花弁数の関係(人工光下),図2 生殖成長期の変温処理が花器官数に与える影響,図3 温度が花弁数に影響する生育ステージの同定と温度処理技術

その他