食用大豆品種を用いた良質な大豆ホールクロップサイレージの調製条件

要約

東北地域で栽培されている主要な食用大豆品種から得られるホールクロップサイレージは、品種や刈取り生育ステージの違いによらず、20%以上のタンパク質含量が期待でき、いずれの品種でも刈取りが子実肥大盛期では予乾、黄葉中期では乳酸菌添加により良質なサイレージを調製できる。

  • キーワード:大豆ホールクロップサイレージ、食用品種、予乾、乳酸菌
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料利用グループ
  • 代表連絡先:電話 019-643-3556
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

輸入に依存するアルファルファ乾草を代替する自給タンパク質飼料源が求められている。北米では、アルファルファの代替として飼料専用品種の大豆をホールクロップサイレージ(WCS)として利用することが普及している。日本では、飼料専用品種がなく、海外からの導入に際して、種子の供給や遺伝子組換え植物への対応等が普及の制限要因になることが多い。この問題に対しては、当面、広く流通している国内の食用品種の流用により対応可能と考えられる。また、日本でWCS用大豆を栽培するにあたり、使用できる登録除草剤がないという制約がある。これに対しては、イタリアンライグラスをリビングマルチとして導入した無除草剤での栽培体系が構築されたが、この栽培体系に基づいた、複数の食用品種についてのサイレージ発酵品質の比較は検討されていない。そこで、東北地域で主に栽培されている複数の食用品種について、実験室規模でのサイレージ調製を行って最適な大豆WCSの調製方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 大豆のホールクロップ利用時の収穫適期である子実肥大盛期(枝豆時期)から黄葉中期(葉部の50%程度が黄化)にかけて、粗タンパク質含量は20%以上を維持し(図1)、その値はアルファルファ乾草と同等以上である。
  • 乾物率は、刈取り生育ステージの進行により全ての品種で上昇する(図1)。なお、子実肥大盛期においては、全ての品種で良質な発酵品質を得る基準である乾物率30%を下回るため、予乾が必要である。乳酸発酵の基質となる単少糖類含量は、品種および刈取り生育ステージによっては良質な発酵品質を得る基準である6‐7%を下回るため(図1)、発酵品質を安定化させるための添加剤等の処理が必要である。
  • 子実肥大盛期では、圃場での予乾処理により、乾物率を40%前後に上昇させると不良発酵が抑制され、全ての品種でVスコアが90以上の良質なサイレージとなる(図2)。
  • 黄葉中期では、市販乳酸菌製剤(畜草1号)の添加により、乳酸発酵が促進してpHが低下し、全ての品種でVスコアが90以上の良質なサイレージを安定的に調製できる(図3)。

成果の活用面・留意点

具体的データ

図1 大豆ホールクロップの品種別および生育ステージ別の粗タンパク質含量,図2 子実肥大盛期での品種別および予乾処理別のサイレージ発酵品質,図3 黄葉中期での品種別および乳酸菌添加処理別のサイレージ発酵品質

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2018年度
  • 研究担当者:神園巴美、嶝野英子、内野宙、河本英憲、出口新、藤竿和彦
  • 発表論文等:神園ら(2020)日草誌、65:236-241