覆土量を制御できる湛水土壌中条播機

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要約

代かきした水田に、コーティング種子を一定の深さで播種することのできる、土壌表面硬度に応じて覆土量を制御する機構を持った、作溝覆土式の湛水土壌中条播機である。播種深さの安定により表面露出種子が減少し、出芽・苗立ちの安定、生育むらの解消に寄与できる。

  • 担当:生研機構・生産システム研究部・大規模機械化システム研究・土壌管理システム研究
  • 連絡先:048-654-7070
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械,稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

従来の湛水条播機は、土壌表面の硬度等によって播種深さが変動し、出芽・苗立ちが不安定となりやすい、鳥害・生育むら・倒伏が起こりやすい、等の問題がある。そこで、土壌表面の硬度等の影響を受けにくくすることにより、表面露出種子の少ない安定した播種深さを確保できる湛水土壌中条播機を開発した。

成果の内容・特徴

  • 全長の拡大及び剛性を強化したフロート、シュー式の作溝器底部に延長プレートを取り付けることにより、「浅め」と「深め」の2段階の播種深さを選択できる作溝器、リアルタイムに土壌表面硬度を検知し、その出力に応じて角度を制御できる回動式覆土板、等からなる湛水土壌中条播機(図1、表1)。
  • 開発機の特徴は以下のとおりである。
    1)改良フロートによる土壌表面への追従性の向上及び、土壌表面硬度に応じた覆土板角度の制御により、幅広い土壌条件で表面露出種子の少ない安定した播種深さを確保できる(表2、図2 )。その結果、鳥害を抑制できる可能性があるとともに、転び苗や浮き苗を減らすことができる(表2)。
    2)作溝深さが「浅め」の設定では7±5mm、「深め」の設定では10±5mmの深さに安定して播種されることから、地域に応じた適正な播種深さを選択でき、安定した苗立ちでむらのない生育が可能となる(表2、図2)。
    3)1倍重コーティング種子で乾もみ換算2.5~11.0kg/10a、2倍重で同2.0~6.0kg/10aの幅広い播種量に対応できる。

成果の活用面・留意点

  • 高性能農業機械実用化促進事業に移行し、市販化の予定。
  • 播種深さを2段階に調節できることから、幅広い地域で導入が可能となる。
  • 地域や品種に応じて適正な作溝深さを選択する必要がある。また、播種時の土の硬さは田植時と同程度とし、水深1~2cm程度のひたひた水で作業することが望ましい。

具体的データ

図1:各開発機の概要
図1:各開発機の概要

 

図2:出芽深さの分布(平成10年度3~5箇所の平均)
図2:出芽深さの分布(平成10年度3~5箇所の平均)

 

表1:開発機(試作5号機)の主要諸元と構造
表1:開発機(試作5号機)の主要諸元と構造

 

表2:播種精度(平成10年度の平均値)
表2:播種精度(平成10年度の平均値)

 

その他

  • 研究課題名:高精度水稲湛水直播機-条播機の開発
  • 予算区分 :経常・21緊プロ(共同)
  • 研究期間 :平成10年度(平成6~10年)