手動調節式粒状肥料可変散布機

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要約

繰出モータの回転数を手動で調節し、設定施肥量の-75%から+75%まで7段階に施肥量を変えられる可変散布機。施肥量を、稲の生育過剰な場所で減らし、生育の悪い場所で増やす可変穂肥を行うと、収量と玄米蛋白質含量のむらを減らすことができる。

  • 担当部:生研機構・生産システム研究部・土壌管理システム研究・大規模機械化システム研究
  • 連絡先:048-654-7068
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械、稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ほ場整備後の水田など地力むらの大きなほ場では、作物の部分的な過繁茂や倒伏などが発生し、収量や品質に悪影響を与えることがある。そこで、これらのほ場における作物の収量や品質のむらを減らすことを目的に、生育に応じて作業中に施肥量を変えられる粒状肥料可変散布機を開発し、水稲への可変穂肥の効果を明らかにする。

 

成果の内容・特徴

  • 本機は、水田ビークル用の粒状物散布機(作業幅7.5m)をベースに開発したもので、運転席横のレバー(図1右)によりロータリスイッチを切換え、繰出ロールを駆動するDCモータの回転数を制御して施肥量を調節する散布機(図1左)である。
  • 本機の特徴は、運転者が作業中に、左右別個に3.75m幅単位で、設定施肥量(10~30kg/10a)の-75%から+75%まで7段階に手動で施肥量を調節できることである。
  • 0.7m/s程度以下の作業速度で、円滑な可変追肥作業を行うことができる。
  • 地力むらの大きい水田、又は基肥窒素量を5段階に変えて人為的に生育むらを発生させた水田において、稲の生育が過剰なところで25~75%穂肥量を減らし、生育の悪いところで25~50%穂肥量を増やす方法で可変穂肥作業に利用して得られた効果の例等を以下に示す。 (1)一定穂肥に比べ、収量のむらが減少する傾向がある(表1、図2)。背負動力散布機(流し多口噴頭付き)による一定穂肥と比べると、収量むらの減少程度はさらに大きい(表2)。
    (2)一定穂肥に比べ、食味に関係する玄米蛋白質含量のむらも減少する傾向がある(表1、図2)。
    (3)穂肥量を生育過剰なところで減らし、生育の悪いところでは増やさずに通常の量とすることで、玄米蛋白質含量の平均値を減少させ、食味向上に寄与できる可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 可変施肥の今後の研究に活用できる。
  • より適切な可変施肥を行うには、作物の生育状態を検出して施肥量を変更する自動可変施肥機の開発が望まれる。

具体的データ

図1:可変散布機の外観(左)と施肥量調節用可変レバー(右)

図1:可変散布機の外観(左)と施肥量調節用可変レバー(右)

図2:籾収量と玄米蛋白質含量の頻度分布

図2:籾収量と玄米蛋白質含量の頻度分布

表1:水田ビークルによる一定穂肥との比較(5回の試験の合計)

表1:水田ビークルによる一定穂肥との比較(5回の試験の合計)

 

表2:背負動力散布機による一定穂肥との比(平成12年、どんとこい、側条基肥)

表2:背負動力散布機による一定穂肥との比(平成12年、どんとこい、側条基肥)

その他

  • 研究課題名:稲用追肥機の高精度化に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:後藤隆志、堀尾光広、西村 洋、林 和信、盛山勝一郎
  • 発表論文等:第59回・60回農機学会年次大会講演要旨、2000・2001、特許出願中(特願平11-53142)