田植機の苗供給補助装置

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要約

乗用田植機の前部に積載された苗マットを、まとめて田植機後部の苗載せ台上端まで移送する装置である。田植機への苗積載と、田植機上での苗載せ台への苗補給が機械化され、苗供給作業が省力化・軽労化される。

  • キーワード:田植機、マット苗、苗供給、省力化、軽労化
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・栽植システム研究
  • 連絡先:電話048-654-7071、電子メールt_konishi@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

乗用田植機による田植作業において、苗の補給作業は作業時間の15~20%を占めており、育苗、苗運搬とならんで省力化が 遅れている。マット苗1枚の重量は6~7kg程度であり、人手による運搬の可能な範囲ではあるが、1ヘクタール当たりでは1tを超える重量を扱うことか ら、高齢者や婦女子にとってかなりの重労働となっている。このため各種マット資材やロングマットなど苗自体を軽量化する試みもなされているが、一般的に普 及している土育苗のマット苗については人手によるほかに手段がないのが実情である。本装置は田植機への苗積載と苗載せ台への苗補給の両方を省力化・軽労化 するために開発されたものである。

成果の内容・特徴

  • 乗用田植機(8条植え)側面で、座席部の左右側方から前に伸びた2本の苗移送アームの先端に、それぞれ4枚のマット苗を積載 可能で左右にスライドする苗テーブルが装着されており、田植機の油圧によってこのアームが苗の水平を保持しつつ運転席後方の苗載せ台上端まで、左右個別に 回動する構造の苗供給補助装置である(図1)。
  • 開発した技術の特徴を以下に示す。
    1)田植機前部では、補助者がほ場の外から苗テーブルに苗を載せる。この時、通常の田植機と異なり苗テーブルが田植機前部へ張り出していることと、低位置で横一列になっているため、補助者が持ち上げる高さが低くなり、苗積載作業が軽労化する(図2)。
    2)苗移送アームが4枚の苗をまとめて苗載せ台上端まで移送するので、運転者は苗を持ち上げ/持ち運ぶ労働から解放される。
    3)苗テーブルは苗載せ台に合わせてスライドするので、苗載せ台への苗補給は苗テーブル上ですくい板を傾けるだけでよく、苗補給作業が省力化・軽労化する(図3)。
    4)苗移送アームの回動は運転者の手元スイッチで行うが、安全のため苗テーブルを一番外側に寄せないと作動しない構造となっている。
    5)本苗供給補助装置を使用した場合の作業者の負担と、通常の予備苗台を使用した場合の作業者の負担を調査した(表1)結果から、運転者、補助者ともに苗供給作業中の心拍数増加は本装置の場合が低く、省力・軽労効果が確認されている。
    6)本装置を用いた場合の作業時間は、田植機への苗積載時間は平均28%低減、苗載せ台への補給時間は作業方法により異なり、16%減~8%増という実験結果である。

成果の活用面・留意点

  • 本装置の「予備苗台が田植機前下方へ移動する」という方式は、市販田植機の予備苗台に採用され、実用化している。
  • 苗移送アームの回動時間は、安全のため苗積載時で20秒、空で14秒程度としてある。従って、苗積載と苗補給を連続して行う と待ち時間が生じるので、作業能率を低下させないためには苗積載と苗補給を分けて行うとともに、苗移送アームの回動を田植作業中に行うことが望ましい。ま た、アーム回動は周囲に十分注意して行うこと。

具体的データ

図1 苗供給補助装置の働き

 

図2田植機への苗積載

 

図3田植機上での苗補給

 

表1 作業中の労働負担と作業時間

 

その他

  • 研究課題名:苗供給の省力化の研究
  • 課題ID:21-01-03-01-02-03
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:1998~2003年度
  • 研究担当者:小西達也、土屋史紀、窪田潤、菊池豊、(株)クボタ
  • 発表論文等:小西ら(2001)「乗用型田植機の苗補給装置」(特開2002-354917)