つり下げ式高設栽培ベッドに対応したイチゴ収穫ロボット

要約

イチゴ収穫ロボットは、つり下げ式高設栽培ベッドの通路を走行し、果実の着色度を基に収穫適期の果実を判別する。そして果柄を把持切断することにより果実に接触せず採果を行い、トレイに収容する。収穫率は6割強で、採果処理時間は9s/果である。

  • キーワード:イチゴ、収穫ロボット、画像処理、マニピュレータ、エンドエフェクタ
  • 担当:生研センター・特別研究チーム(ロボット)
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

イチゴの高設栽培の普及により作業姿勢は改善されたものの、栽培管理や収穫作業は手作業に頼っており、収穫期間も長く半年近くに及ぶ。このため収穫作業は全体の労働時間(約2,000 h/10a)のおよそ1/4を占め、省力化や機械化が切望されている。そこで、果実への接近が容易で、栽培ベッド下の空間を利用可能なつり下げ式高設栽培ベッドを対象に、収穫適期の果実のみを選択して果実に傷を付けないように摘み取るイチゴ収穫ロボットを開発する。

成果の内容・特徴

  • イチゴ収穫ロボットは、ロボット本体と移動プラットフォームに大別される。ロボット本体は、画像処理部、円筒座標型マニピュレータ、エンドエフェクタ、トレイ収容部から構成される(表1、図1)。移動プラットフォームは、通路方向に走行する架台Aと、架台Aの上を横方向に移動する架台Bから構成される(図2)。
  • 移動プラットフォームは、架台Bにロボット本体を搭載してつり下げ式高設栽培ベッド(通路幅90~95cm、ベッド幅40cm、高さ100cm)の下を走行する(図2)。ロボット本体はホーム位置を起点に横移動を行い、目的の通路(1~5)に進入する。通路内では間欠走行と採果動作を繰り返し、通路端点まで往復する。そして再び横移動を行いホーム位置に戻る。トレイの交換を行った後、次の通路の処理に進む。
  • 収穫ロボットは照明条件が一定な夜間に無人で稼働する。通路内での収穫動作は、通路側から画像処理部で果実を認識するとともに、重なりを判別した後、着色度を基に収穫適期果実を選択する。対象果実に正対し、中央のカメラ画像から果柄の傾きを推定して、その角度に合わせてエンドエフェクタを3段階に傾斜させる。エンドエフェクタを接近させ果柄を把持し切断する。採果した果実をトレイに収容する。果皮に触れないため果実への損傷はほとんど発生しない。
  • 収穫ロボットの性能は、収穫時期や品種によって果実の認識ミスが発生するものの、収穫適期の果実のうち60~65%を収穫でき、1果あたりの採果処理時間は9s、理論作業能率は18~20h/10aである(表2)。

成果の活用面・留意点

  • つり下げ式高設栽培ベッドに対応し、2011年度以降に市販化の予定である。
  • 本ロボットを夜間に稼働させ、作業者はロボットが収穫できなかった果実を翌朝に収穫する必要がある。
  • 果実の露出が多くなるよう栽培管理することにより、収穫性能の向上が期待できる。

具体的データ

イチゴ収穫ロボットの主要諸元イチゴ収穫ロボットの全体図

収穫性能ハウス内での収穫ロボットの動作

その他

  • 研究課題名:IT、ロボット技術等を活用した革新的な農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800e
  • 予算区分:経常、緊プロ
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:林茂彦、山本聡史、齋藤貞文、小林研、重松健太、吉田啓孝、シブヤ精機(株)
  • 発表論文等:Rajendra et al. (2009) Engineering in Agriculture, Environment and Food. 2(1):24-30
                       重松ら (2009) 農業機械学会誌、71(6):106-114
                       Hayashi et al. (2010) Biosystems Engineering. 105(2):160-171