消費エネルギの無駄を削減する循環式穀物乾燥機の籾の適正乾燥作業条件

要約

循環式乾燥機を用いた籾の乾燥作業では、張込み量、設定停止水分、排気の吸引はエネルギ消費を増加させる作業要因となり、通常運転に比べ最大で約6割の消費エネルギ増となる。保守点検などの使用者側の対策で、エネルギの浪費を抑制できる。

  • キーワード:循環式穀物乾燥機、灯油消費量、電力消費量、エネルギ、削減
  • 担当:生研センター・特別研究チーム(エネルギー)
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

化石燃料の価格上昇による経営の圧迫、同燃料の消費による地球温暖化の進行が問題となっている。循環式穀物乾燥機では、満量張込みの奨励、過乾燥の防止、排気ダクトの保守点検等の対策を講じることでエネルギ消費量(灯油消費量+電力消費量)を節減できるとされており、これらの対策による効果を数値で示し、使用者に的確な情報を示す必要がある。そこで、同じ型式の乾燥機を用い、運転条件の違いでエネルギ消費量がどの程度変化するかを調査する。

成果の内容・特徴

  • 循環式穀物乾燥機(型式:PCG-9F、最大穀物処理量860kg、熱風式)を同じ環境下に設置して雰囲気条件をそろえ、同一圃場の籾を張込み、サンプル条件を統一して調査した情報である(図1)。エネルギ消費量については、乾燥に要したエネルギ消費量を乾減水分量で除した「穀物水分1kgの乾減に要するエネルギ量(MJ/kg・H2O)」にて評価することで、作業要因別に比較できる。
  • 張込み量を満量にして乾燥した時に比べ、張込み量約半分で乾燥した場合は、電気で50%、灯油で26%、全体で29%エネルギ消費が増加する。さらに最低張込み量で乾燥した場合は、電気で122%、灯油で58%、全体で65%エネルギ消費が増加する(図2)。圃場での収穫作業の調整や無駄な分別乾燥を行わない等の対策を講じることでエネルギ増加を抑制できる。
  • 籾水分15%w.b. まで乾燥した時に比べ、13%w.b.まで過乾燥すると、電気で20%、灯油で20%、全体で20%エネルギ消費が増加する(図3)。停止水分ダイヤルの確認や水分計の定期的な校正等の対策を講じることでエネルギ増加を抑制できる。
  • 排気ダクトの破損等により排気が室内に漏れ、吸引風量の約25%の排気が機内に吸引された場合、排気の吸引がない時に比べ、電気で22%、灯油で18%、全体で19%エネルギ消費が増加する(図4)。排気ダクトの保守点検を行うことでエネルギ増加を抑制できる。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は社団法人日本農業機械化協会編の「農業機械の省エネ利用マニュアル-平成22年度改訂版」(2011年3月改定後にインターネット上に公開予定)に掲載され、広く利用される。
  • 本情報は籾での試験結果であるが、対策は麦の乾燥作業にも適用できる。
  • 水分差のある籾を混合するような無理な満量張込みはしない。
  • 本成果の内容は一般的な循環式乾燥機を一定の条件下で試験した結果であるため、消費エネルギの抑制傾向は普遍的である。しかしながら、消費エネルギの抑制割合の数値は、籾の初期水分、機械の型式や設置場所によって変わる。

具体的データ

供試機の仕様と試験風景

張込み量の違いによる乾燥エネルギの差

停止水分の違いによる乾燥エネルギの差

排気の一部吸引による乾燥エネルギの差

その他

  • 研究課題名:循環型社会の形成に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800d
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:2009~2010年度
  • 研究担当者:野田崇啓、日髙靖之、横江未央、後藤隆志